【著者と1時間】『地球と生きる ~災害と向き合う知恵~』を記した金田義行さん | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【著者と1時間】『地球と生きる ~災害と向き合う知恵~』を記した金田義行さん

冨山房インターナショナル発行/1800円+税

 2011年に東日本大震災が発生し、大津波によって多くの人命が失われた。「どうしたら被害を軽減できるのかについて、多くの人が考えるきっかけになった」と金田義行氏は語る。今後、南海トラフ地震の発生が想定されており、東北地方太平洋沖地震よりも広範囲で大きく揺れ、瞬く間に大津波に襲われ、最悪の場合、命を落とす可能性がある。そうならないためにも希望にあふれ夢を抱く子どもたちは防災・減災、さらには地球科学について学んでおくことが重要となる。

香川大学四国危機管理教育・研究・地域連携推進機構副機構長/地域強靱化研究センター長、特任教授
金田義行さん


 本書は、児童向けに地球の成り立ちや構成、太陽系の仕組み、地震や津波の仕組みと防災・減災についてわかりやすく図解した地球科学の図鑑である。というのも、「地球や海洋、地震・津波の仕組みついて興味を持ち理解をしてほしい」と願うからだ。

 私たちは、大きな地震が発生した時、避難するように教育されている。しかし、実際、どうして地震が発生して、どうして避難が必要なのか考えたことがあるだろうか。「例えば、地震が発生した時、P波(初期微動・縦揺れ)の後、何秒後にS波(主要動・横揺れ)が来たかで震源までの距離を推測できます。そういった、簡単な知識を持っているだけで、身の安全を守る避難行動につなげることができるのです」。さらに続けて、「命を守ることが第一です。それは高齢者も例外ではありません。なぜなら高齢者は、いまの社会をつくってきた知見や経験を生かして地域社会の再建の一翼を担うキーパーソンだからです」と力説する。一方、防災訓練についても、「発災時にどこにいるかによって、避難行動は変わります。一度、通勤・通学路の危険個所の確認や避難方法を考えておくと、いざというとき慌てません」という。

 いま、コロナウイルス感染症拡大によって、テレワークの導入が進んでいる。これは防災の視点に立っても非常に有効である。「昼間、都市部の人口が減ることで、人だかりで逃げ道をふさぐとか街が帰宅困難者であふれるということは少なくなりますし、地域での共助も促進されると考えます。首都直下地震が発生した場合、確実に都心は被災しますので、暴露人口が減れば死者の数も減ります」と話す。

 地球は、災害をもたらす。しかし、「地球が生きているからこそ、富士山などの山があり温泉があり、川があり、海があります。そのおかげで肥沃な土地があるから農業ができ酪農ができます。そういった豊かな恵みを私たちに日々もたらしてくれています」。だからこそ、たまに発生する災害から命を守る術を身に着けることは大切だ。そのためにも、地球の仕組みを知り、災害に備え、いざという時、命を守る行動をコミュニティー全体でとることが重要となる。そして、万が一、被災した時は、世代を超えて皆の知識と知恵を結集し社会や生活を再建すれば良いのではないか。その際に、地球の知識があればより防災・減災の視点も交えて考えることも可能となる。

 現在、「地学」を学ぶ機会が少なく、「地球」についてあまり知識がない人がいるのも事実だ。だからこそ、本書を使って地球について家族で話し合ってみるのもいいかもしれない。

毎年、作成されている月めくりカレンダー。過去に災害があった日に、発生した年と災害名が記されている。また、1カ月単位でテーマを決め、災害発生のメカニズムや記録などが紹介されている。1口メモとして「今月の減災の心構え」も記されている。1500円+税


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