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【45°の視線】建築史家・建築批評家 五十嵐太郎氏 寄稿『マトリックス レザレクションズ』から考える

最終更新 | 2022/03/16 10:52

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 昨年末に公開された映画『マトリックス レザレクションズ』を2度、鑑賞した。いうまでもなく、約20年前に公開され、その斬新な表現が世界に衝撃を与えた第1作『マトリックス』(1999年)から始まった3部作の続編である。SF映画における都市表現としても興味深い。なぜなら、20世紀半ばの映画に描かれたクリーンなモダニズム的な造形による未来都市は、『ブレードランナー』(82年)のアジア的な雑踏の近未来のイメージによって更新されたが、『マトリックス』はいまとまるで同じだったからだ。

 テレビ版の『新世紀エヴァンゲリオン』(95-96年)も、平時における地上は日常の延長というべき風景だったが、『マトリックス』では人類が仮想世界にいることを気付かせないために、へんに未来的なデザインとせず、現実の凡庸な都市と同じになっている。

 一方、第2作の『マトリックス リローデッド』(2003年)において、現実の世界における人類最後のとりで、ザイオンが初めて登場したが、これはやや原始的な社会として描かれ、デザインとしての面白さがまるでなく、正直失望した。ちなみに、補完的なエピソードから構成された短編アニメ集、『アニマトリックス』(03年)では、超常現象が起きる特異な場所をコンピューターのバグとして解釈していたことは興味深い。

 これまでのシリーズは、常に前作の構図を転覆していたが、『レザレクションズ』もそうだった(以下、最新作のネタバレあり)。特に冒頭の3部作の内容が実は世界的にヒットしたゲームであり、主人公のネオはそのゲーム・デザイナーというメタフィクション的な展開は笑った。

◆追従許さない歴史を超える作品

筆者所蔵の映画パンフレット、DVDなど


 第1作から振り返ろう。『マトリックス』は、もしかすると現実は仕組まれたもので、「うそじゃないか?」という陰謀論的な疑念を、機械が人類を支配するために創造した仮想世界という設定と巧みにつなぎ、救世主のネオがそれを打ち破ることが期待された。しかし、『リローデッド』では、創造者のアーキテクトが登場し、救世主もプログラムされた存在であることが明かされる。

 そして『マトリックス レボリューションズ』(03年)は、ネオがマシン・シティーの支配者と交渉し、暴走して増殖する黒服のスミス(=監視プログラム)を倒すことで、人類への攻撃を止めさせた。つまり、人類/機械の対立からずれている。そして『マトリックス レザレクションズ』では、一見、第1作を反復しているようだが、ネオと終盤に覚醒した相棒のトリニティーはビルの上から見える夜明けのサンフランシスコの風景も美しいと語り、最後は仮想世界をもっと改善しようと空に飛び立つ。すなわち、現実/仮想という二元論、そして後者の否定からの脱却にさえ踏み込んでいた。

 もちろん、『レザレクションズ』では旧作へのレファランスゆえに、懐かしさはあっても、第1作で感じた視覚的なインパクトはもうない。それは『マトリックス』があまりにも革命的な映像だったことの裏返しでもある。バレットタイム技法(アクションは静止しているのにカメラだけが動く)のほか、カンフーとワイヤアクションと最新VFX(ビジュアル・エフェクツ)の融合は、後に数多く模倣され一般化し、下手に使うと陳腐にすらなった。その世界観や映像処理の技術など、コンピューターが進化する絶妙のタイミングの99年に登場した映画だったのである。

 もっとも、改めて第1作を見直して感心したのは、構図など、絵的なカッコ良さがまったく色あせていないことだ。1つでも記憶に残る美しいシーンを実現すれば、映画は成功だと思うが、超絶的な名シーンばかりで構成されている(恐らく絵コンテが良いのだろう)。

 そこで思い出したのが、ミース・ファン・デル・ローエのシーグラムビル(58年)だった。これは高層オフィスビルのプロトタイプとなり、現在のわれわれからすると、ガラスの箱としては当たり前の建築だろう。だが、ミースのビルが持つ美しさや繊細なディテールは、いまなお追従を許さない。技術は模倣しやすいが、それだけとは違う価値を持つことで歴史を超える作品となるのだ。




(いがらし・たろう)建築史家・建築批評家。東北大大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。



 

  

   

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