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【45°の視線】建築史家・建築批評家 五十嵐太郎氏 寄稿 破壊をデザインした男、井上泰幸

最終更新 | 2022/07/19 22:57

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 梅雨ということもあり、行こうと思う日に限って大雨になったために、幾度か延期を繰り返した「吉阪隆正展ひげから地球へ、パノラみる」展を東京都現代美術館でようやく鑑賞した(6月19日に終了)。結局、その日も帰りは雨になったが、展覧会は弟子たちの思いが詰まった熱い内容だった。とりわけ、CGがなかった時代における手書きのドローイングの濃密さに改めて感心させられる。興味深いのは、恐らく偶然だが、もう一つの企画展「生誕100年特撮美術監督 井上泰幸展」が同時開催されていたことだ。

 吉阪は1917年に生まれ、井上は22年生まれだから、ともに戦争体験を持つ。特に後者は揚子江でアメリカ軍の攻撃を受けて、左膝下を失っている。それゆえ、戦後は小倉の傷痍軍人補導所で家具を勉強し、日本大学芸術学部では、山脇巌に師事している。つまり、彼はバウハウスに学んだ建築家からデザインを教わっているのだ。吉阪は建築をつくる側になったが、井上は新東宝の撮影所の美術スタッフを務めたことをきっかけに、記念碑的なシリーズ第1作の映画『ゴジラ』(54年)など、特撮の仕事に携わった。円谷英二に気に入られ、ひたすら破壊される建築をミニチュアで制作する。本物の戦争を体験し、激しく負傷した人間が特撮の破壊シーンを手掛けていたわけだ。
 次々と新作を世に送り出す映画会社は、撮影が終わればセットデザインを破棄してしまうが、井上泰幸展は、本人が自ら大量の資料を保管していたおかげで、オリジナルの絵コンテ、方眼紙の図面、ロケハンのスケッチ、イメージボードなどが数多く展示されていた。従って、吉阪と同じく手の力を感じるドローイングが楽しめる。会場には、井上が使用していたドラフターを展示しており、筆者も学生のときに使っていたので懐かしく感じた(コンピューター世代になるとこの感覚は失われるだろう)。
 これまで戦後のサブカルチャーでは、ウルトラマンのシリーズに登場する怪獣をデザインした成田亨が再評価され、企画展が開催されたり、出身地の青森県立美術館で常設展示されるようになったが、派手な造形で目立つ怪獣だけではなく、いよいよ背景美術やセットデザインも本格的に注目されるようになったのである。井上によれば、54年の『ゴジラ』の現場をこう回想していた。「早大の建築学科の学生の何人かがアルバイトで来た。巡視船や、国会議事堂、銀座の街並みのセットの図面を引いた思い出がある」。既に吉阪が早大で教べんを執っていた時期だから、もしかすると彼の教え子も映画に参加してたかもしれない。
 井上が手掛けた作品を紹介しよう。『空の大怪獣ラドン』(56年)、『ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐』(60年)、『モスラ』(61年)、『ウルトラQ』(66年)、大阪万博の三菱未来館の映像(70年)、『ゴジラ対ヘドラ』(71年)、『日本沈没』(73年)、『ノストラダムスの大預言』(74年)、『続・人間革命』(76年)、『零戦燃ゆ』(84年)、『首都消失』(87年)、『竹取物語』(87年)、『ウルトラマンティガ』(96年)などだ。

『ラドン』における福岡の岩田屋のミニチュアセット再現

 一定の世代より上ならば、見たことがある作品が含まれているはずだ。建築家は、人々の記憶に残る街角の風景をつくる。一方で特撮美術監督は、セットはすぐに消えるが、印象的な映像に刻まれることで、大衆の視覚的な記憶に刷り込まれる。展示の冒頭では、山脇アトリエ時代の井上によるモダニズムの建築デザインも紹介していた。そして特撮の仕事では、架空の建築や乗り物の設計(宇宙ステーション、X星地下格納庫、円盤、潜水艦アルファ号など)、どこからセットを撮影するかという視点場の高さや位置の検討、セットがどのように壊れたり、動いたりするのかといった緻密なスタディーを行っていたが、図面を見ると、建築やデザインを学んだ経験が生かされている。
 ところで、井上の妻、玲子が彫刻家として活躍していたように、現代美術・デザインとサブカルチャーは近接していた。

(いがらし・たろう)建築史家・建築批評家。東北大大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。



 

  

   

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