土木学会関西支部は、2017年度の技術賞および技術賞部門賞の受賞業績を決めた。技術賞には阪神高速道路会社などの「ETCを活用したシールド発生土運搬管理システム～大和川線での適用事例～」など5件を選定した。技術賞部門賞には4件を選んだ。5月10日に大阪市の建設交流館で開く第91回支部総会で表彰を行い、受賞者に賞状と楯を贈る。
　技術賞は、土木技術の進展に著しい貢献をした業績を表彰し、成果をたたえることで支部会員の土木技術者の意識高揚を図ることを目的として1982年から実施している。応募対象は計画・調査・設計・施工・維持管理で特色がある業績。近年では大規模構造物の設計・施工だけでなく、維持管理やソフト的な取り組みも受賞している。今回は予選を通過した10件について選考委員会（委員長山口隆司大阪市大教授）が「新しい」「使える」などの基準に基づき審査した。

　工事名と受賞者は次のとおり（(1)受賞者(2)主な概要と選考理由）。
〈技術賞〉
　▽ETCを活用したシールド発生土運搬管理システム～大和川線での適用事例＝(1)阪神高速技術、阪神高速道路会社(2)現場ごとにETCゲートを設置。車両がゲートを通過することで自動認証し、計量日時、車両番号、積載物の入力など自動で実施するシステムを開発し、産業廃棄物の処理工程に大幅な効率化を実現した。
　▽関西圏最大級断面のシールド施工～都市計画道路大和川線シールド工事＝(1)大阪府都市整備部富田林土木事務所、大阪市交通局、大鉄工業、大林組(2)関西圏では最大級の掘削外径（12.54m）となるシールドトンネルを築造。チャンバー内塑性流動管理法などの掘進と計測管理法を実施した。

　▽硬質地山におけるトンネル発破低周波音消音器を用いた環境配慮施工事例＝(1)近畿地方整備局豊岡河川国道事務所、大林組(2)八鹿日高道路の久斗トンネル工事。住宅地近隣では火薬を使わず大型掘削機を採用し、火薬使用範囲では騒音の少ない発破特殊電子雷管を使用した。

　▽高速道路供用下でのASR損傷橋脚梁のリニューアル（西船場JCT）＝(1)阪神高速道路会社建設・更新事業本部大阪建設部、清水建設(2)1号環状線と16号大阪港線とを直結するための付加車線および渡り線の建設。高速道路を供用したまま橋梁梁部を撤去・再構築した。

　▽シールド工事で創造する浸水対策・合流式下水道の改善と魅力溢れる地下空間＝(1)大阪府東部流域下水道事務所、大成建設・村本建設・中林建設JV(2)下水道増補幹線の整備と雨天時に河川へ放流される汚濁物質量の削減を目的とした貯留施設の整備を一括施工のシールド工事（セグメント外径6m、工事延長約2744m）で実現した。

〈技術賞部門賞・喜ばれる技術〉
　▽JR阪和線東岸和田駅付近高架化事業～高架化完成と駅を中心としたまちづくり＝(1)JR西日本、前田建設工業、鹿島、清水建設、大鉄工業、ジェイアール西日本コンサルタンツ(2)JR東岸和田駅を含む下松駅～東貝塚駅間約2.1㎞の線路を高架化。鉄道利用者の安全性向上のため、ホームの安全対策、コンクリートの品質向上および工期短縮に取り組んだ。
〈同・成し遂げた技術〉
　▽新名神アクセス高槻東道路五領高架橋の整備～名神・JR上連続高架＝(1)大阪府都市整備部交通道路室道路整備課(2)名神高速道路、JR東海道線および阪急京都線を跨ぐ全長564mの連続高架橋。4台の大型自走台車により桁を一括して、地組ヤードから搬送、架設する工法を採用した。

〈同・使える技術〉
　▽内空79㎡の大断面ボックスカルバートのプレキャスト化への挑戦と施工評価＝(1)NEXCO西日本関西支社新名神大阪西事務所、奥村組(2)新名神高速道路東畦野トンネル工事の上り線75m、下り線77mの計152mの区間において、高さ8.4m、幅14.6m、内空断面79㎡の大断面ボックスカルバートのプレキャスト化に挑戦した。

〈同・新しい技術〉
　▽淀川における新しい流量観測手法の導入＝(1)近畿地方整備局淀川河川事務所(2)淀川流域で4観測点を選定し、超音波のドップラー効果を利用したH－ADCP手法および動画による波の追跡よる画像解析法（STIV法）の流量観測法を導入。4年間にわたり、これら手法の実用性を検証した。

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