【深化する関西の建設ICT⑯】日積サーベイ BIM連携へ進化するHEΛIOΣ | 建設通信新聞Digital

5月7日 火曜日

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【深化する関西の建設ICT⑯】日積サーベイ BIM連携へ進化するHEΛIOΣ

 日積サーベイ(大阪市)が、3次元建築積算システム『HEΛIOΣ(ヘリオス)』のダイレクト連携を拡大している。建築プロジェクトのBIM導入が着実に進展する中、HEΛIOΣユーザーからBIMソフトとのダイレクト連携を求める声が強まっていることも背景にある。同社システム開発部チーフの辻尾勇人氏に、ダイレクト連携の狙いについて聞いた。

辻尾氏


――データ連携の課題は

 日本では建築プロセスにおいて、それぞれの専門分野に特化したソフトウェアが混在し、これらを統合することは不可能と言っても過言ではない。だからこそ、それぞれのソフトをつなげる中間ファイルというものが重要になってくる。HEΛIOΣでは当初、BIMソフトとのデータ連携を行う際にはIFCを採用し、開発を行ってきた。このIFCは建物を構成する全ての部材や部屋などがオブジェクト化でき、データを交換する際にはまさに打って付けの中間フォーマットであるように思えた。

 ところが、よくよく調べると、仕様の解釈の違いから起こるいわゆる方言が多く見受けられ、まだまだ発展途上であることが判明した。それでも当時は、その方言を徹底的に調べ上げ、データ交換の実現に取り組んだ。ただ“つながる”と“使える”とでは大きく異なる。確かにデータ交換ができるという意味ではつながるようにはなったが、BIMソフトによっては何時間も連携に掛かってしまう物件もあり、実のところ実務で“使える”とは言い切れなかった。

――ダイレクト連携の方向性は

 そこで当社はHEΛIOΣの連携情報だけに絞り込んだダイレクト連携へと大きく舵を切った。これはIFCと異なり、HEΛIOΣへのデータ交換だけを目的とした専用ファイルを直接出力することによって、従来のような2段階の変換を低減し、必要最小限の情報に絞り込んだ、効率的な連携が可能となった。この形式で2016年にはオートデスクの『Revit』と、翌17年にはグラフィソフトの『ArchiCAD』と、このダイレクト連携化を果たした。

 ただ、この2社はいずれも海外製ということもあり、ダイレクト連携を実装するためのAPIが備わっていた。それに対して、福井コンピュータアーキテクトの『GLOOBE』には同様の機能がなく、従来どおりのIFC連携をユーザーへ薦める他なかった。当然、GLOOBEへの対応ができない状況に対し、HEΛIOΣユーザーから不満の声があったことは言うまでもない。

『GLOOBE』→『HEΛIOΣ』の連携イメージ


――新たな試みとは

 そこで、当社は福井コンピュータアーキテクトとSDK(Software Development Kit)に関する協議を何度も繰り返し行った上で、遂に、ことしにリリースされる予定の『GLOOBE2021』からRevitやArchiCADと何ら遜色のないダイレクト連携の実現が可能となった。

 実際、何時間も連携に掛かっていた物件も、数分で完了する事例もあり、大きな効果をもたらした。通常、BIMを用いた積算業務でも、設計変更などで、何度も繰り返しデータ変換作業が発生するが、このダイレクト連携を使うことによって、大幅な作業時間の短縮が可能となった。ソフトベンダーにとっては大きな開発労力のかかるダイレクト連携だが、その労力を費やしてでも、より実務に「使える」機能としていくことが極めて重要である。

HEΛIOΣLinkを搭載したGLOOBE画面


 今回のダイレクト連携の実現に際し、ご協力いただいた福井コンピュータアーキテクトには感謝したい。お互いにとって、それぞれのアプリの機能としても、協力体制的にも、大きな進展と言えるだろう。なお、今回のGLOOBE版ダイレクト連携は、2021年2-3月にリリースされる『HEΛIOΣ2021』と同時にバルシステムのホームページより無償提供する予定である。




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