【記者座談会】東京都の入札制度改革1年 企業規模で分かれる評価/自由度の高い認可外で目指す「職・育近接」共同保育所 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【記者座談会】東京都の入札制度改革1年 企業規模で分かれる評価/自由度の高い認可外で目指す「職・育近接」共同保育所

A 東京都内の建設企業に衝撃を与えた「東京都の入札制度改革」実施方針の突然の公表から1年が経過した。業界はどう受け止めている。
B この制度改革、行政の常套句的に言うと「試行」だけど、土木・建築、設備など工種ではなく企業規模別に見ると、中小・零細は「ほぼ全て撤回要求」、大手・準大手、中堅は「一部見直し要求」と対応は大きく分かれた。企業規模で入札制度改革の評価が二分したと言っても過言ではない。
C その代表例が、JV結成義務の撤廃、いわゆる混合入札導入だ。東京都入札監視委員会による『入札契約制度改革に係る検証報告書』で、中小企業が単体受注した事例をその成果として掲げても、都内の中小建設業界の不満は収まらない。事例に挙げた中小企業の中には売り上げが落ちた中堅企業が含まれていたこともあるが、そもそも混合入札によって大手・準大手企業がJV編成を拒否し、地元建設業が何年も前から目玉プロジェクトとしてJV参加に期待を寄せていた事業に応札すらできなかったからだ。
A 入札不調の動向はこの1年でどう変わったのかな。
C 3月の入札監視委員会部会で提示された検証結果報告書では、試行が始まった昨年8月から2月までの財務局分と、それ以外の分の数値が明記されているけど、これだけでは具体的な影響が判然としない。
B 報告書を見るより、都が公表した第3四半期入札データを整理・分析したほうが分かりやすい。不調割合が最も高かったのは財務局案件の19.0%だけど2番目に高いのは建設局案件の17.3%で、件数は66件と最多だった。
A なるほど。大手・準大手企業が受注する工事規模だけでなく、中小企業が受注する規模の工事を発注する建設局の案件で入札不調が増加しているわけだ。
B だから問題になっている。中小企業政策は安倍政権だけでなく都など自治体にとっても重要な柱だ。下手をすればこの柱が折れかねない。

働き方に応じた柔軟な保育サービスで幅広い選択肢を社員に

社会との“架け橋”を目指し、共同運営する3社の架け橋となる期待も込めた「かけはし保育園」。2日の開園セレモニーには永冶泰司長大社長、村田和夫建設技術研究所社長、出水重光八千代エンジニヤリング社長が顔をそろえ、保育所開設の意義をアピールした

A ところで長大と建設技術研究所、八千代エンジニヤリングによる共同保育所が開園したね。
D 同業3社が共同で設置・運営する点がまず注目される。結婚・出産・育児の流れの中で離職する社員をいかに減らすかは各社に共通する課題だが、単独で事業所内保育所を運営するのは負担が大きい。こうしたリスクヘッジとともに、建設コンサルタント業界として「働く人を大事にする」というメッセージを社会に発信することにもつながる。
E 企業主導型保育所として、認可外保育施設ながら国から整備費や運営費が助成される一方で、認可外だからこそのメリットも発揮できる。
A どういうことなのかな。
E 複数企業が共同設置できることもそのメリットの1つだけど、なにより設置や利用に自治体が関与しないため、勤務条件や就労状況などそれぞれの働き方に応じた柔軟な保育サービスが提供できる。午前7時30分から午後8時30分までの13時間という長い保育時間や定員内で一時保育にも対応するなど、幅広い選択肢があることは社員にも大きな安心感を与えるだろう。
A 入園児1人でのスタートとなったが。
D 4月は入園シーズンだし、住まいに近い認可保育所がどうしても優先される。ただ企業主導型の良さは繰り返すようだけど制約の多い認可保育所にはない利用の自由度にある。育児休業からの円滑な職場復帰を支える受け皿となることは間違いない。
E 職場と育児の距離が縮まる「職・育近接」は女性にとって働きやすいだけではなく、男性の意識変革を促し、働き方そのものを見直すきっかけになるのではないかな。

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