【カラーコンクリート】日本のニーズは自然との調和 時代の先をいくトレンドを追求 ランクセス | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【カラーコンクリート】日本のニーズは自然との調和 時代の先をいくトレンドを追求 ランクセス

高橋カーテンウォール工業が協力した PCa部材の意匠パターン

 「日本を始めアジアの建設市場では、いろいろな色相を試す大胆さが出てきた」と語るのは、ドイツ酸化鉄顔料メーカーのランクセスでアジア・パシフィック地域のセールス&マーケティングディレクターを務めるマーセル・リンセン氏だ。年間37万5000tもの顔料生産量を誇る同社では約4割をアジア・パシフィック地域に供給する。2020年までに4億ユーロの設備投資も進行中で「ワクワクするような成長市場」と手応えを口にする。
 同社が全世界に供給する酸化鉄顔料の45%は建設分野で使われている。舗装やコンクリートブロックなどの建材に加え、近年は都市化の進行に伴い、カラーコンクリートを採用する建築物が増加し、それが生産量にも大きく貢献している。使用される顔料は赤系が4割を超えるが、近年は黒系のニーズも増加基調にある。

マーセル・リンセン氏

 都市化の波が進行するアジアでは「各国とも色の選択に多様性があり、それぞれに個性がある」とリンセン氏は説明する。特に日本は都市化という点でも成熟度が高いだけに、施主や設計者の意向も多岐にわたり、幅広い色相を求められる。「日本はアジアのカラートレンドを形成していくだろう」と先を見据える。
 同社が黄赤系統の色相に基づく27色を表現する顔料を「日本の色」として販売を始めたのは1年前。黄赤系統の色相「10YR」は日本の自然や風土との調和性が高く、これまで公共インフラなどに採用が広がっていた。
 ドイツで10YRの色見本をもとに試作を繰り返し、顔料「バイフェロックス」シリーズの黄色系920、赤系110、黒系330を主とした特殊ブレンド色を実現した。
 目線を世界各国に移せば「建築の意図を補完するような色相が好まれている」という。例えば建築家リュディ・リチオッティ氏がフランス・マルセイユで手掛けたヨーロッパ地中海文明博物館は、地元マルセイユ港の周辺環境に溶け込む「ダークグレー」の色相が印象的だ。同社が世界各国のカラーコンクリート事例を集めた第3回アワードで最優秀にも選ばれた。

フランス・マルセイユのヨーロッパ地中海文明博物館

 この建築には250m3の現場打ちコンクリートが使われ、ダークグレーの色相を表現するために黒系のバイフェロックス「330」と「318」が使われた。伝統と現在の共生のシンボルがカラーコンクリートによって表現されたことがアワードでも高く評価された。セメント量に対し3-6%の酸化鉄顔料を混ぜることで、多彩な色合いを醸すことができるカラーコンクリートは耐候性が高く、将来のメンテナンスコストも抑えられる。海外では多くの建築家から支持されている。
 3月に東京・有明の東京ビッグサイトで開かれた見本市「建築・建材展2018」に出展した同社は、カラーコンクリート建築の魅力を伝えようと、高橋カーテンウォール工業の協力のもと、異なる表面仕上げで意匠性を高めたプレキャスト(PCa)部品の特別展示を行った。顔料は現場打ちコンクリート、PCaコンクリート部品、さらにはコンクリート瓦や舗装などさまざまな建材に美的要素を提供できる。ブースではグラフィックコンクリート、木目調、砂岩調など8種類のパターンを用意した。
 リンセン氏は「常に時代の先をいくカラートレンドを追い求めている」と力を込める。特に酸化鉄顔料はアースカラーの色相を出すことが得意だけに「自然との調和を求める日本のニーズとの相性は良い。世界的にも構造物と景観との調和を意識した色相に関心が高まっている。ブースで展示した8種類のパターンは今後のカラーコンクリート建築の可能性をさらに引き出す」と期待をよせている。

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