【インフラ点検効率化】AI×ロボットの導入がカギ 早期のデータ提供と認証システムを | 建設通信新聞Digital

5月18日 土曜日

公式ブログ

【インフラ点検効率化】AI×ロボットの導入がカギ 早期のデータ提供と認証システムを

 インフラの老朽化が課題となり、現場が担い手不足に直面する中、より効率的なインフラ点検を実施する上でロボットの導入が打開策の1つとして注目されている。先端建設技術センターが3月に開いた「インフラ点検ロボット・AIに関する日米の動向調査報告会」で、米国視察の技術調査団長を務めた新田恭士国土交通省総合政策局公共事業企画調整課企画専門官(現土木研究所技術推進本部上席研究員)が、AI(人工知能)を組み合わせたロボットの現場導入の必要性を指摘し、2018年度からロボット用AIの民間開発を促す環境整備に着手した同省の施策を紹介した。
 米国視察では、日本におけるインフラ点検用AIの研究開発やインキュベーション機能を探るため、民間企業などと意見交換し、最新の事業活動を収集した。
 視察結果を踏まえ、新田氏は日本のインフラ点検分野におけるAIの導入について、▽Start Upの力を生かすこと▽Speed upによる資金調達の容易化▽規制のSand boxに代わる実証機会--の3つの「S」が必要との持論を展開した。
 AI活用の突破口を開くにはスタートアップ企業の参画が不可欠とし、「現状の制度にとらわれずに目指すべき未来像(ユースケース)と達成すべき要求性能(リクワイアメント)の明確化が必要」と指摘した。ロボットの実装にはAIが不可欠であり、「予算化に1年を要する(行政の)意志決定サイクルでは遅い。早期のデータ提供と認証システムが必要」とし、そうした実証機会を得るには「管理責任を分離したテスト事業であれば実証的な政策立案が直ちに可能」との考えも示した。
 具体的には、ロボットにAIによる変状検知機能などを組み合わせることで近接目視が必要な損傷や変状個所を絞り込む「スクリーニング」を行い、大幅な業務の効率化を目指す。そのため、インフラ管理者や土木技術者の点検に関する正しい判定を蓄積した「教師データ」を公開、民間に提供し、AI開発を促進する国交省の新規施策を紹介した。
 中でも注目されるのが研究開発を促すインキュベーション機能となる「AIセンタ構想(仮称)」だ。国などの機関が学習・認証環境「AIラボ」と実運用環境「AI点検支援センタ」の機能を備えるAIセンタを設置し、民間の技術開発を取り入れながらインフラ管理者に点検AIを提供する構想だ。教師データ、測定データ、点検結果などの情報の一元化にはクラウドを運用する構想だ。実現に向けて「技術開発促進のための協調領域、教師データの整備・提供方法、点検AIの運用スキームの3つの論点の整理が重要になる」と今後の課題も指摘した。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら