【記者座談会】東京都入契制度改革で混在する入札不調と低価格受注は改善できるか/霞が関ビル50年、大手町ビル60年 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

公式ブログ

【記者座談会】東京都入契制度改革で混在する入札不調と低価格受注は改善できるか/霞が関ビル50年、大手町ビル60年

A 小池百合子知事の肝煎りで、建設産業界から見れば突然、強行した形となった東京都の入札契約制度改革から約1年。26日には1団体10分間の検証ヒアリングも終わった。
B 入札契約制度改革に建設産業界の関心が集まったのは、制度変更の中身だけでなく、派生した課題が浮き彫りになったからだ。例えば、入札不調の件数が増加する一方で、低価格受注が目立ったことが代表と言える。相反する関係の2つのキーワードがここまで明確化したのは珍しい。
C 入札不調が、都内中小建設業が応札する小規模工事から、大手企業が応札する財務局案件と呼ばれる規模まで、一般土木工事を筆頭に拡大したのは、企業の応札価格よりも都の予定価格が下回っているからだ。業界的に言えば、応札価格を構成する各単価と経費の計上について、民間の実態に官積算が対応しきれていないことになる。
A 官積算が民間実態に対応できていない中で、なぜ低価格受注は起きるのか。
D 多くの場合は、工事実績確保が理由だ。いま、公共工事は一定規模が確保されているけど、先行きを厳しく見る向きは多い。そうなると、同種工事の実績が応札条件の場合、発注案件が今後少なくなることが予想される工事には、応札も集中する。企業にとっては戦略的受注だから、通常の応札判断とは当然違う。
B 相反する出来事が同時に起きることは、責任を持った発注者なら昔から理解している。しかしいまの東京都のように、一部の学識者の主張が行政の声をはねのけて制度改正の形で通用してしまう現状の中、入札不調改善のための取り組みが果たしてどこまでできるか不安を抱く傾向が強いのは事実だ。
C 確かに。東京都も週休2日工事が拡大した時、国土交通省が合わせる形で踏み切った補正係数導入や積算基準改定などタイムリーな対応ができるかどうか、注目する必要がある。

「経年優化」を体現 サービスで価値を高めるビル

霞が関ビルではビル全体を光アートが包み込むイベント「KASUMI NIGHT TERRACE」を5月31日まで開催中。“デジタル掛け軸”は地球の自転速度に合わせ変化し続け、同じ風景は二度と見ることができない一期一会のアート


A 話は変わるけど、三井不動産による日本初の超高層「霞が関ビルディング」(東京都千代田区)が今月12日、竣工50周年を迎えた。都市計画法や建築基準法の改正、ゼネコンなどによる最先端技術の導入など、当時の官民双方の先進的な取り組みによって実現したプロジェクトだ。
B 三井不動産の岩沙弘道会長が社長時代から口癖のように言っていた「経年優化」を、体現したビルの1つでもある。完成後も、隣接する再開発事業「霞が関コモンゲート」と連携し、エリア全体の魅力向上に貢献している。50周年はあくまで「折り返し地点」との位置付けであり、次の50年に向けてさらに進化させていくとした。
D 一方、霞が関ビルのさらに上を行くのが「大手町ビルヂング」(千代田区)だ。この4月で竣工60周年を迎えた。高さ200m級のビルもある大手町エリアだが、大手町ビルは東西方向に200mと長く、当時は「東洋一」のビルとも評された。日本で初めて全館冷房を採用したビルでもある。
B いま、大手町ビルには金融デジタル革命を目指す「FINOLAB(フィノラボ)」などが入居している。築60年とはいえ、大胆なリノベーションによって内部はとてもオシャレで、新旧が入り混じった別世界とも言える雰囲気を持つ。
D 三菱地所の杉山博孝会長は昨年、大手町ビルについて「すべてのビルが建て替えではなく、サービスによってより価値を高める方法がある」と述べていた。躯体が非常に強固なため、今後も大胆な大規模改修を計画している。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら