【ヴェネチア・ビエンナーレ】日本館テーマは「建築の民族誌」 ドローイングで作品の"探求"映し出す | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

公式ブログ

【ヴェネチア・ビエンナーレ】日本館テーマは「建築の民族誌」 ドローイングで作品の“探求”映し出す

 国際交流基金は、26日からイタリア・ベネチアで始まる第16回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館の展示概要をまとめた。テーマは「建築の民族誌」。キュレーションは貝島桃代氏(アトリエ・ワン、筑波大准教授、スイス連邦工科大チューリヒ工=ETHZ教授)とロランシュトルダー(ETHZ建築理論・建築史研究所長)、井関悠(水戸芸術館現代芸術センター学芸員)の3氏によるチームが担当。国内外の大学やデザインスタジオ、建築家から現代美術作家まで42組の実践から生まれた設計詳細図や空間と活動の関連図、ハイブリッドな都市の環境図、自然災害後の農産漁村の大規模調査などの42作品を紹介する。

Momoyo Kaijima,Exhibition Design Drawing,2017((c)Momoyo Kaijima)

 今回の展示は貝島氏がこれまで取り組んできたプロジェクトの延長線上にあるという。同氏はフィールドワークを通じて街中にある建物を観察し、そこにある現代人の暮らしのあり方や都市の現実をドローイングを用いたガイドブックとしてまとめる取り組みを行ってきた。ユーモアあふれる視点で鋭く都市の現実を切り取り、使用者の視点で建築の本質に議論を投げかけ、国内外で反響を呼んでいる。
 この手法に世界中で影響を受けたものや、同時代に世界各地に自然発生した作品、ドローイングなどを集め、建築の民族誌と題して総覧することで、建築と暮らし、建築の役割をはじめとする社会の未来に関する議論の進化を投げかける。

Yukiko Suto, W House-Entrane Side, 2010((c)Yukiko Suto, courtesy of Take Ninagawa, Tokyo)

 キュレーターチームの3人は、「建築設計の過程や結果にあらわれる無数の状況をどうしたら効果的に描きうるのか、ドローイングは単なる表記方法を超え、建築を記録し、議論し、評価するためのどんな道具になりうるのか。ドローイングは人々の利用や欲望、思いを探求し、現代のグローバル社会での断片化した暮らしの全体像をどのように描きうるのか」と提起した上で「すべての作品がドローイングをめぐる新たなアプローチの探求を映し出している。それらは建築との関係性から生まれたドローイングであり、同時に社会についてのドローイングでもある。私たちはこれを『建築の民族誌』と呼ぼうと思う」とコメントしている。
 11月25日まで開催されるヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の総合テーマは「フリースペース」。イヴォンヌ・ファレル氏とシェリー・マクナマラ氏(グラフトン・アーキテクツ)が総合ディレクターを務める。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら