【記者座談会】建設業労災は死亡者・死傷者とも増加 熱中症にも注意喚起 全国安全週間 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【記者座談会】建設業労災は死亡者・死傷者とも増加 熱中症にも注意喚起 全国安全週間

A 毎年7月1日から7日までの「全国安全週間」はことしで91回目となる。スローガンは『新たな視点でみつめる職場 創意と工夫で安全管理 惜しまぬ努力で築くゼロ災』。準備期間の6月からゼネコンや設備工事会社など企業各社で安全大会が一斉に開かれているが、建設業の労働災害状況はどうなっているのだろう。
B 厚生労働省の2017年(1-12月)労災発生状況確定値によると、建設業の労災による休業4日以上の死傷者数と死亡者数がともに、過去最少となった前年(16年)を上回り、増加に転じた。死傷者数は1万5129人と、4年ぶりに増加した。死亡者数は323人で、3年ぶりに増えた。16年は初めて300人を下回ったものの、再び300人台になった。

中央労働基準監督署など6機関・団体の中央安全推進大会では、基本動作と環境の変化への適応を求めた


C 建設業での労災増加は、慢性的な人材不足、労働力の高齢化が進んでいることなどが要因とみられている。ただ、死傷者数は3年続けて1万5000人台のため、1万7000人台だった13年や14年と比べ、減少傾向にある。一方で、死亡者数は全産業の中で建設業が最も多く33.0%を占める。
D 重点課題の「墜落・転落」災害は、建設業の死亡災害の41.8%、死傷災害の34.1%を占め、事故別で最多の状況は変わっていないが、継続的に墜落・転落災害防止対策に取り組んでいることから、長期的には減少傾向にあるといえる。
A 労災統計の死亡災害発生状況には含まれない建設業の一人親方はどうなっているの。
C 17年の死亡者数は前年比5人増の51人。うち労働者災害補償保険特別加入者は31人、未加入者が20人だった。事故別では「墜落・転落」が全体の3分の2を占め34人と突出している。
B 労働者扱いとはならない中小事業主や役員、家族従事者も含めた「一人親方など」の死亡者数は103人で、中小事業主の死亡者数は47人と前年から倍増した。
A 企業担当記者は分刻みのスケジュールで各社の安全大会を取材している。取材先数が多く、主催者あいさつだけを聞いて次の大会の取材に移動する場合もあるが、それなりに傾向が見えるのでは。
E ゼネコンの大会では、一人ひとりが「事故を絶対に起こさない」という強い決意を持つとともに、ほかの作業員の不安全行動を見かけたら遠慮なく注意するなど、常に周りの状況に気を配りながら作業するように求めるトップが多いように感じた。
F 一声掛け運動に象徴されるような作業者間のコミュニケーションが安全の根底にあることは、いつの時代でも変わらない普遍的なものだ。人間同士のつながりを緊密にして、チームワークを良くして現場を運営してほしい。また、これから酷暑を迎えるので、熱中症対策に万全を期すよう求める声も多い。
B 厚労省の17年(1-12月)の職場での熱中症による死傷災害発生状況(確報)をみると、建設業は死傷者数が前年比28人増の141人、うち死亡者数は1人増の8人となっている。死傷者は3年ぶり、死亡者も2年ぶりに増えている。労働災害に加え、熱中症にもより具体的な対策が必要だ。
F 設備工事会社の大会を取材していると、墜落・転落などの繰り返し災害が減らないことがよく分かる。経験の浅い労働者に対する安全教育の重要性を訴えることは多いが、教える側と教えられる側との危険に対する感度の違いが底にあると感じている。

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