地盤工学会(大谷順会長)は12日、東京都千代田区の日大駿河台キャンパスで「平成30年北海道胆振東部地震による地盤災害緊急報告会」を開いた=写真。土木学会(小林潔司会長)と共催した。調査団は北海道支部を中心に、石川達也北大教授を団長として7日結成。地盤災害の現象・事象の原因の学術的究明と、今後の復旧対策や防災・減災対策を支援することを目的に、被災地域の現地調査や資料収集などの初動調査を実施した結果を暫定的に報告した。
石川氏は、北海道で初めて震度7を観測した今回の地震について、「道内では過去に例を見ない内陸断層直下型の地震」であり、2003年の十勝沖地震など過去の海溝型や海洋プレート内地震に比べてマグニチュードは6.7と比較的小さい一方で「震源域を中心に狭い範囲で強震動が集中した」と、その特質を説明した。
続いて川尻俊三北見工大助教が、厚真町での広範囲・大規模斜面崩壊を報告。河岸段丘崖に住宅が多く点在する中で多数の斜面崩壊が発生。土塊が崖上から水田に滑るように流動しており、崩壊面の擦過痕からは高速で移動したことがうかがえるとした。移動土塊の土質は堆積年代や風化程度が異なる大きく3つの火山灰で構成されており、表層崩壊のみならず、谷部の比較的深部での崩壊も確認された。川尻氏は「今後は現地でのボーリングによるサンプリングや力学試験によってすべり面となった地質を推定する必要がある」とした上で、調査団として「これらの調査や研究成果を生かして危険個所リスク評価と防災・減災対策の提案につなげたい」と語った。
この日は、「7月豪雨による地盤災害調査報告会」もあり、土木学会水工学委員会西日本豪雨災害調査団が河川被害の概要や中部、関西、岡山、広島、四国各地区の調査報告、「豪雨地盤災害に対する地盤工学の課題」をテーマとした全体ディスカッションを行った。席上、大谷会長は7月豪雨災害に関する会長特別委員会について「現在準備を進めており、きょうの意見を反映させながら今後の活動を進めていく。学会としてしっかりとした提言をしていくことで社会に貢献していきたい」と語った。