【記者座談会】週休2日、残業縮減で現場は動くのか/リーマン・ショックから10年 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【記者座談会】週休2日、残業縮減で現場は動くのか/リーマン・ショックから10年

A 政府が官公需法に基づく「2018年度中小企業者に関する国などの契約の基本方針」を閣議決定した。
B 官公需総額に占める中小企業者の契約目標率は3年続けて「55.1%」になった。今回は、働き方改革への対応として、労働時間の短縮や労働条件の改善に向け平準化の推進やモニターなどによる実態把握、自治体との連携を進めるよう発注機関に求めた点がポイントだ。必要な工期を確保するための国庫債務負担行為の活用や施工時期の平準化に配慮することも求めている。
C 地方の中小企業に仕事が行き渡ることは必要だと思うけれど同時に週休2日にして残業も減らしてというのは、かなり無理がある。特に地方自治体では「週休2日に必要な工期」がどういうものかも分からないことが多い。ある中小企業の現場所長は、週休2日のモデル工事を受注したけれど、「発注者が示した工程は、雨が何日とかざっくりしすぎていて全然、使えない。結局、土曜日も稼働しているし、忙しい時は日曜日も働いている。本気でやるならもっと精密な工程表をつくるか、工期の終わりをなくすしかない」とあきらめ顔で話していた。その上に残業を減らすとなると、とてもではないが、現場が動かない。

地方建設業者が企業をたたまざるを得ないような『働き方改革』は避けなければならない


B ただでさえ社会保険加入の確認やICT化といった要請もある上に、週休2日、残業抑制というお題目も降ってきて、地方中小企業には対応できなくなっている。ある社長が「働き方改革でなく、働かない改革だ」と嘆いていたので、「そうはいっても法律は5年後に適用されるけど」と問うたら、「じゃあ、会社をたたむしかない」と即答された。
C 政府が自治体に通知して、掛け声だけでは現実がついていかない。週休2日で残業なしにできる工程や予算づくり、発注のあり方見直しなどを、自治体に本気で取り組んでもらう必要がある。

深刻危機の教訓を糧に気の引き締めを

A ところで、リーマン・ショック(世界金融危機)から10年が経ったね。当時の紙面を見ると連日、地方建設業者の窮状を訴える記事が載っていた。
D 公共投資の減少が長年続いた末の金融危機だったから、大手ゼネコンも地方建設業者も専門工事業者も、危機的状況に陥った。国土交通省では、実質的な地方建設会社の業界退場促進策とも言える「新分野進出」が政策として真面目に打ち出されていたし、『建設業廃業マニュアル』の作成も話題にのぼっていたほどだ。
E 専門工事業者もダンピングや職人解雇が限界に達し、業界存続に後がなくなった。そこで打ち出したのが、社会保険の加入促進だ。社会保険未加入対策は、実は全国建設業協会が1963年にまとめた「技能労働者確保の総合対策」に盛り込んでいたほど昔から言われた課題だったが、企業の負担が増え技能者自身の手取りが減ることから手つかずのまま放置されていた。それに本気で取り組み、技能者の処遇を改善しようという決意は、専門工事業者にとってまさに『捨て身』だったと言える。
D 公共工事設計労務単価の見直しに着手したのも、08年度だった。当時の紙面によると、結局、労務費の調査方法改善という結論にしかならなかったけれど、当時の議論が東日本大震災後の労務単価引き上げにつながっていったのは間違いない。
A そのころの苦境がいまの取り組みにつながっている。だが、当時は自らの行動で自分の首を絞めて苦境に陥っていったという側面も否定できない。その教訓を糧に、将来、再び当時のような状況に戻らないよう、行政も含めた建設産業界全体が気を引き締めなければならない。

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