全国建設業協会(近藤晴貞会長)は、各建設業協会の会員企業を対象に実施した「働き方改革の推進に向けた取り組み状況等に関するアンケート調査」の結果をまとめた。月間残業時間(各社の上位3人を対象)は、前回調査から80時間以上の回答割合が減少し、44時間以下が増加。年間残業時間(同)とともに、わずかながらも長時間労働の改善傾向が見られる。女性の活躍推進に関する調査では、発注者の仕様書規定に伴い、現場への専用トイレ設置割合が増加する一方、活躍推進の取り組み状況(複数回答)では「特に取り組んでいるものはない」との回答が約4割あった。
月間残業時間に対する回答は、69.8%が44時間以下におさまり、45-59時間が12.3%、60-79時間が9.0%、80-99時間が4.2%、100時間以上が4.9%だった。80時間以上は9.1%で前年度の11.0%から減少し、44時間以下はわずかながら増加している。
年間残業時間は、359時間以下の回答割合が微増し、720時間が6.1%で前年度調査を0.7ポイント下回った。
全建は「 数字だけをとらえれば長時間労働の割合が減少していると見ることもできるが、働き方改革によるものなのか、仕事の減少に伴うものなのかは分からない 」(労働部)としている。
休日の取得状況を今回初めて、本社などの「事務所」と「現場」に分けて回答を求めた結果、「おおむね4週8休」との回答割合は事務所が39.5%だったのに対し、現場は9.2%と1割未満にとどまった。現場は、「おおむね4週6休」が最多の50.6%を占め、以下、「おおむね4週5休」(20.2%)、「おおむね4週7休」(11.0%)の順で多い。
直近1年間の職員賃金については、「基本給を引き上げた」(52.1%)、「一時金のみを引き上げた」(8.6%)、「基本給・一時金とも引き上げた」(20.3%)を合わせた81.0%が引き上げを実施しており、前年度調査の78.6%を上回った。
回答企業数の違いなどもあり、職員全体に占める女性の割合は12.0%で前回調査から0.8ポイント減少したものの、純増数は961人となり、全建は「増勢は続いている」(同)としている。
女性がいる現場での専用トイレ設置状況については、「すべての現場で設置」が25.3%、「一部の現場で設置」が36.1%となり、ともに前年度調査の回答割合を上回った。設置が増加している背景には、発注者の仕様による取り組みの強化がある。
今回初めて実施した発注者ごとの取り組み調査では、「すべての現場で指定」「ほとんどの現場で指定」「一部の現場で指定」を合わせた設置指定は国土交通省地方整備局が45.8%、都道府県が24.5%、市区町村が9.5%だった。
発注者の後押しもあり、女性が働きやすい環境の整備は前進している一方、活躍推進に向けた取り組みでは「特に取り組んでいるものはない」との回答が38.3%あり、自主的な取り組みは道半ばの状況にある。
全建は、調査結果を31日まで全国8地区で開く国交省各地方整備局などとの地域懇談会に提示し、建設業の働き方改革実現に向けた施策展開の議論に役立てる。