【渋谷や世界の未来を生み出す】代々木公園にサッカースタジアムが建設予定 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【渋谷や世界の未来を生み出す】代々木公園にサッカースタジアムが建設予定

 渋谷未来デザインは9月、東京都渋谷区の代々木公園内にサッカー用スタジアムを建設する構想を発表した。2020東京オリンピック・パラリンピック後の最大プロジェクトとして、2027年の完成を目指している。実現に向けどのようなプロセスを踏み、誰が主体で推進していくのか。渋谷未来デザインで理事を務め、今回の構想を発表した金山淳吾氏に、実現までの展望を聞いた。
 渋谷未来デザインは18年4月、“渋谷や世界の未来を生み出す”取り組みの一環として発足した。産官学民の連携組織で、参画パートナーとして渋谷区、京王電鉄、東京急行電鉄、東急不動産、日建設計などが参画している。
 9月13日にはイベントの中で、スポーツ・エンターテインメント、地域コミュニティー、防災などあらゆる分野の拠点となるスタジアムを代々木公園内に建設する構想「SCRAMBLE STADIUM SHIBUYA」を発表した。
 想定事業費は500億-1000億円で、サッカーを中心とする3万人超規模のスタジアム構想を描いている。発案者の1人である金山氏は、27年のスタジアム完成に向け、21年にも整備までの具体的な道筋を示す計画だ。

現時点のスタジアム整備候補地は、公園内南側のサッカーグラウンドやイベント広場があるエリア。「単体の整備か、公園全体を再整備するかは両軸で検討を続ける」考えだ


◆山場は統一地方選
 実現までのプロセスの中で、金山氏が1つの山場と見据えるのが、19年の統一地方選挙だ。「次の渋谷のまちづくりを市民に対し宣言する場で、このトピックスがどう扱われるかはわれわれ(渋谷未来デザイン)の大きな関心事となっている。区民の代弁者である区議会議員や区民代表の区長に就く人々が、このプロジェクトをどれだけの熱量でサポートするかに注目したい」と語った。
 地方選までにスタジアム建設の構想が「市民にとっても関心事となっている状態にする」ため、19年の春先までにあらゆる分野の人々と対話の場を設ける計画だ。次回の開催予定は11月1日で、関東近郊のサッカーファンや関係者を招く。
 「関東近郊に住み、東京で働くサッカーファンにとって、代々木公園にサッカーを観戦できる場ができるという構想はどう受け止められるのか。また、子育てをする人や教育関係者にとって、地域に子どもたちがサッカーを身近に感じられる施設があったらどうか。われわれの想像だけではなく、実際に公園を利用している人々の声として、フィードバックしてもらいたいと思っている」
 その後も、アーティストプロダクションなどエンターテインメントの担い手や防災の専門家、小中学生を含む市民、婦人部を含む地域商店会・町会など、各回でさまざまな立場の人々から意見を集める考えだ。

現時点のイメージ。建築家の田根剛氏が作成した

◆民間提案に耳傾ける
 一方で、ディベロッパーやコンサルタントなど民間事業者からの提案は、現時点では受けていない。「いま描いている絵の印象が強いので、別の絵を出してみようという空気になっていないのでは」と見ている。
 「渋谷未来デザインは立ち上がったばかりの一般社団法人で、リソースは多くない。丁寧に扱える人間関係とチームメンバーで、構想を作り上げているというフェーズだ。もっとこんなアイデア・方法・環境の生かし方があるよという提案が寄せられるのであれば、一つひとつ耳を傾けていきたい」。法律に関する業務などは、日建設計など参画パートナーに委託し協力を仰ぐ方針だ。
 事業の主体が誰になるのか、という問いには「分からない」と答えた。「渋谷未来デザインはあくまでも一提案者に過ぎない」とし、今後行政と共同で進める事業になり得るのか、行政が構想の着眼点を生かし別に事業主体を公募するのかは「われわれがどこまで強い構想を持てるかによる」という考えだ。

◆課題は法規制
 代々木公園は、代々木神園町、神南2丁目に位置し、敷地面積は65.8ha。風致地区に位置する都市計画公園となっている。法規制の課題については、「5年、10年というスパンの中で起こり得る技術革新や災害リスク、文化振興のチャンスを具体的に描き出していき、現行法とどれだけミスマッチするのか、どのように読み解けばいまの法律の中で実現できるのかを学ばなければならない」と述べた。Park-PFI(公募設置管理制度)を活用し、スタジアム以外に集客施設を配置する可能性も検討している。
 構想発表から約1カ月が経過し、ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や問い合わせフォームなどを通じて住民からの意見も集まっている。多くは賛同を示しているが、「反対の声もある」と語る。自然公園の中にコンクリート構造物ができることへの懸念や、バスケットボールやフットサルのコートをなくさないでほしいという意見があると言う。
 「構想への受け取り方がさまざまにあることは想定内。知ってもらうことが第一歩で、対話を通じ応援や意見を検討材料として集めたい」と考えている。
 (かなやま・じゅんご)1978年生まれ。電通を経て、アーティストマネジメントや音楽・映像制作を手がけるOORONG-SHAに入社。16年から一般財団法人渋谷区観光協会の代表理事として渋谷区の観光戦略・事業をけん引してきた。17年、マーケティングサポートを主事業とする「EVERY DAY IS THE DAY」を設立。18年、渋谷未来デザインを設立し、理事に就任。神奈川県出身、40歳。

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