【IR(統合型リゾート)実現へ向けて】万博を超える経済波及効果を期待 外資系企業も水面下で競争 | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【IR(統合型リゾート)実現へ向けて】万博を超える経済波及効果を期待 外資系企業も水面下で競争

 先月23日夜、大阪市での2025年万博開催決定のニュースは、IR(統合型リゾート)関連事業者の視線を釘付けにした。IRについては政府が今後、3カ所程度の対象区域を認定する流れのため、今回で正式決定したわけではないものの、関係者の期待は前のめり気味で一気に高まっている。IRが実現するとなれば、その投資規模や経済波及効果は、期間限定で開催する万博の比ではない。カジノを運営する外資系事業者などは100億ドル(約1兆1300億円)規模の投資を示唆し、日本参入に向け水面下で競争を繰り広げている。

◆知名度向上へアピール
 大阪での万博開催決定を受け、米国のラスベガス・サンズ、香港のメルコリゾーツ&エンターテインメントなど、カジノ運営に実績を持つ事業者が相次いで歓迎のコメントを公表した。万博とIRのセットでの実現、その相乗効果に期待を寄せる内容だ。官民で構成する2025日本万国博覧会誘致委員会には、「オフィシャルパートナー」として外資のIR事業者なども複数名を連ねる。
 シンガポールの大型施設「マリーナベイ・サンズ」は、完成時に日本でも大きく報道され、観光で現地施設を訪れる日本人も多い。運営を手掛けるラスベガス・サンズは、国内でも一定の知名度を上げた。
 ここ数年、日本への参入構想を発表する外資系事業者が相次いでいる。ただ、そもそもカジノが存在しない日本では、知名度の低さが大きな課題の1つでもある。IRの実現に向けては日本企業との連携が欠かせないため、自社のアピールに熱が入る。
 メルコリゾーツ&エンターテインメントは先月12日、大阪市内で自社の事業や組織を紹介するための会社説明会を開いた。主に大阪を拠点とする企業から100人以上が参加したという。IRの開発・運営には「地元企業とのパートナーシップが必要不可欠」(同社)との認識からだ。

メルコリゾーツ&エンターテインメントによる大阪のIR施設イメージ

◆東京都も調査開始
 いまや大阪ばかりに目を奪われがちだが、国内では複数の地域がIR誘致を検討している。大阪府・市のように強いスタンスを表明していない自治体もあるが、北海道、千葉市、東京都、横浜市、川崎市、名古屋市、和歌山県、長崎県などで検討の動きがある。検討とはいえ温度差があり、熟度もさまざまだ。
 東京都はことし10月、IRに関する調査に着手した。IR関連法やギャンブル依存対策法などの制度内容や海外事例などを踏まえ、IR施設が都に立地した場合の経済的・社会的影響について調査・分析し、IRのメリット・デメリットを整理する予定だ。調査は、国内外のIR専門家で構成する「IRビジネスグループ」を持つ有限責任監査法人トーマツが受託している。
 一方、IR分野で80年の歴史を持つ米国のシーザーズ・エンターテインメントは、横浜市・山下埠頭での開発を提案している。インパクトのあるデザインを採用するケースが多いIR施設だが、同社による開発コンセプトは「波」。横浜エリアが、東洋と西洋の文化の窓口として発展し、寄せては返す波のように日本に影響を与え続けてきた歴史を表現したという。同社はこのほか、北海道や東京、大阪などの地域でも提案の検討を進めている。

シーザーズは横浜・山下埠頭で「波」をコンセプトとした開発を提案している

◆地域密着で医療併設
 複数の事業者が1兆円規模の投資可能性を示す中、地域密着型の施設を提案する動きが出てきた。11月に日本参入構想を発表したオーストリア国有企業の「カジノオーストリアインターナショナル(CAI)」は、医療モールを併設した施設を提案している。郊外型の中小規模施設を想定し、複数の都市を調査中だ。クリストフ・ツールッカCEO(最高経営責任者)は、「地域特性を生かして地域に根差した施設を整備したい」との考えを示す。日本法人であるCAIジャパンの林明男代表も「ラスベガスやマカオにあるような施設規模は考えていない」とし、他の事業者とは一線を画す姿勢だ。

国有企業のカジノオーストリアインターナショナルは、医療併設型の中小規模施設を軸として日本参入を表明した

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