【技術最前線】蓄積した製陶技術で"飲む・浴びる・洗う"水を変える「Xウォーター」プロジェクト LIXIL | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【技術最前線】蓄積した製陶技術で“飲む・浴びる・洗う”水を変える「Xウォーター」プロジェクト LIXIL

セラミック管の周りに
炭素繊維を吸着する 

 LIXILは、水栓から出る水に付加価値を与える「X(エックス)ウォーター」プロジェクトを立ち上げた。水を「飲む」「浴びる」「洗う」の3つの用途に分け、それぞれに付加価値を与えて新たな商品提案につなげる。それを実現するためのキーテクノロジーとなるのが、水栓のセラミック技術。浅野靖司LIXILウォーターテクノロジージャパン水栓事業部長は「セラミックの設計・開発力には自信がある」とし、愛知県の常滑東工場で製作しているセラミックを使った浄水カートリッジの重要性を訴える。
 以前は外装壁タイルを生産してきた常滑東工場だが、そこで培った製陶技術を応用し、2006年から浄水カートリッジの中に封入する多孔質のセラミックも焼成するようになった。
 セラミック内部に均等な数マイクロmの微細な泡を作り出すには「窯全体をまんべんなく1200度に保つ必要があり、8本のバーナーを1度刻みで制御する」と常滑東工場製造2課製造1係の高田徹治氏は説明する。ろう石と石灰、粘土を水と混ぜ合わせて成形した管を、均一に加熱する。厚みが不均等だと水の流れが阻害されるため、精度の高い粘土の配合・成形技術も必要だ。「こうした生産工程ノウハウに多大な蓄積があることが強み」(高田氏)という。

セラミック管の周りに炭素繊維を吸着する

 焼き上がった管は、浄水装置のサイズにダイヤモンドカッターで切断し、横から空気を通して、流れにくさで孔のサイズを確認する。次に、管の外側に活性炭を着肉成形し、カートリッジの最終形ができる。吸着力を高めるため、3種類の粗さの違うヤシ殻の活性炭を使用するが、活性炭の重量で混合比率を確認するので水を含まないように室内の湿度を30%以下に保つ必要があるという。
 製造ラインでは、直前まで泡立っていた黒い液体にセラミックの管を浸し、両側のパイプから管内部の圧力を抜くと、わずか4-5秒で管の周囲に厚さ1.5cm程度の活性炭が吸着される。活性炭を固形にするために「和紙の繊維も混ぜている」(高田氏)という。最終工程では、品質検査室が残留塩素やクロロフォルムなど13種類の除去対象物質を水に混ぜ、JIS(日本工業規格)で定められた80%以上の除去率が保たれているかを調べる。
 常滑東工場では、最近になって生体の味覚受容メカニズムを模倣した味覚センサーを導入した。Xウォータープロジェクトに基づき、「水のおいしさ」(浅野部長)も追求するためだ。プロジェクトのスタート後は総合的な水の付加価値向上を視野に入れ、肌にいいシャワーの水などの開発と製造の役割も担うことになった。いずれは製品の海外展開も想定している。

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