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【45°の視線】建築史家・建築批評家 五十嵐太郎氏 寄稿 「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」~映画美術の世界

最終更新 | 2023/02/08 09:48

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 もう四半世紀も前だが、「デジタル小津安二郎」展(東京大学総合研究博物館、1998年)のカタログに寄稿することになり、役得にあずかる機会があった。劣化したフィルムの映像をデジタル技術によって修復することをウリとしていた企画だが、実は『秋刀魚の味』(62年)や『晩春』(49年)など、様々な作品に登場する日本家屋の図面も集合しており、展示ケースに入る前に手にとって自由に閲覧することができた。

 印象的だったのは、方眼紙に平面を描いていたことである。なるほど、基本的には室内のセットのみで、六畳や四畳半などのユニットで構成されていたから、十分かもしれない。またラフな図面があれば、大道具が現場で制作できるのだろう。この後、小津映画における美術セットのオリジナル図面が一堂に揃う機会は、まだないことを踏まえると、貴重な展覧会だった。

 昨年末に刊行された『映画「ハリー・ポッター」シリーズ 公式美術設定&図面集』(玄光社、2022年)を開いて、驚かされたのは、図面群の圧倒的な精度である。平面・立面・断面において具体的な寸法がここまで詳細に記された映画美術のドローイングは見たことがない。しかも建築だけでなく、什器や小物、例えば、浴槽の蛇口の各種図面まで含む。もっとも、ハリー・ポッターの建築は100%オリジナルで考案されたものではない。

 原作では意外に具体的な様式は記されていないが、映画ではほとんどゴシック、もしくはゴシック・リバイバルで統一されている。歴史のある魔法の学校ということで、ホグワーツ城はイギリスのオックスフォードやケンブリッジのカレッジを参考にしたという。またロケ地として、中世のダラム大聖堂、グロスター大聖堂などが用いられた。つまり、実在するゴシックを基調としてフィクションの空間も構想されている。様式やモデルとなる建築が存在するからこそ、密度の高いデザインも可能だった。とはいえ、それでも凄まじい解像度の図面なので一見をおすすめしたい。

『ハリーポッター』のロケ地となったダラム大聖堂


 ジェームス・キャメロン監督の『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(22年)は、征服者に対する原住民の反乱という大きな物語を提示した前作に比べると、多様性をもつ拡大家族vsクオリッチ大佐の私怨という構図になり、ややスケール・ダウンしたが、現時点における3DCGの表現、ならびにCGと実写の融合の最高到達点を確認するだけでも十分に見るべき映画である。特に地上よりも複雑な水の世界の表現や、水中におけるモーション・キャプチャーの活用など、技術的な問題を解決するのに時間がかかり、なんと13年ぶりの新作となった。パンフレットは通常の映画の倍近い値段だったが、小さい文字でぎっしりと情報が書き込まれた図鑑であり、きわめて濃密な内容をもつ。
 小津の映画は同時代の日本家屋を舞台とし、ハリー・ポッターは過去のゴシック様式を参照する実写だが、『アバター』のシリーズは惑星パンドラで繰り広げられるSFのアニメーションである。すなわち、どこにも存在しない架空の世界を構築しなければならない。しかもアニメだから、画面に登場するすべてのものをデザインする必要がある。

◆「世界を構築」する究極の建築家
 『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』の建築としては、オマティカヤ族やメトケイナ族のテント構造の住居、トーテム、ならびに人間のバイオラボ、造船所、円形プランの地球外新興都市「ブリッジヘッド」などが挙げられる。後者の加工物については、3Dプリンターによる高速製造も想定し、乗り物、武器、ロボット、建築の部品が大量生産されるという。ほかにもネットワーク化された建設重機、4本の脚と2本のアームを持つ建築用ロボット、建築資材を運ぶ飛行船や磁気浮上式の列車、連結可能な膨張式の仮設施設などが図解されている。

 が、改めて感心するのは、あらゆるものがデザインされていることだ。例えば、環境、地形、生態系、宗教、民族、言語、衣服、装身具、武器、料理、植物、各種の動物や昆虫、海の生物である。神が世界を創造したように、まるごと世界を構築しているのだ。その作業は究極の建築家と言えるかもしれない。



 

(いがらし・たろう)建築史家・建築批評家。東北大大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。


 

  

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