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【45°の視線】建築史家・建築批評家 五十嵐太郎氏 寄稿「演劇から建築を楽しむ」

最終更新 | 2021/12/24 13:25

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 先日、宮藤官九郎作・演出による『愛が世界を救います(ただし屁が出ます)』を仙台の電力ホールで鑑賞したら、劇中で思いがけない固有名詞に出くわした。戦争で荒廃した2055年の渋谷において登場人物の1人が公園のトイレで暮らしているという設定なのだが、六本木におしゃれなトイレがあって、隈研吾が設計したものだというセリフが入っていた。「THE TOKYO TOILET」のプロジェクトの一環として、ことし彼が松濤公園でトイレを設計したことに触発されたのかどうかは分からないが、建築家の名前が登場しており、一応そのシーンは笑いを誘うことを意図していた。

 なるほど、宮藤は大ヒットしたNHKの連続ドラマ『あまちゃん』に代表されるように、時事ネタやサブカルチャーの固有名詞を大量に使うことが特徴だが、アイドルや歌謡曲など、誰もが知っているネームを選んでいる。とすれば、建築家の有名性において、「隈研吾」という名前が、ここまで一般に到達していたことを裏付けるだろう。なるほど、彼は国民的な建築家になった。

 ことし上演された岡田利規作・演出の『未練の幽霊と怪物』における「挫波」も、ザハ・ハディドの霊が登場し、森山未來が演じたことで話題になった。しかも、まず観光客(ワキ)が訪れ、そのプロジェクトに詳しい人物=東京の建築家(シテ)が説明した後、近所の人(アイ)が別の角度から語り、最後に亡霊(後シテ)が激しく舞う能の形式を採用していた。国家プロジェクトの挫折というテーマが能になり得るのかと思っていたら、俳優陣の所作、歌と演奏によって、ザハの無念を表現した見事な作品に仕上がっていた。本来、この作品は昨年に上演されるはずだったが、コロナ禍によって東京オリンピックと同様、1年遅れてのお披露目となっている。

 劇中における新国立競技場の白紙撤回をめぐる出来事の解釈について筆者と近い考え方だと思っていたら、それもそのはず、監修した「インポッシブル・アーキテクチャー」展のカタログに寄稿した文章が参考文献に挙げられていた。現時点で演劇そのものの再演の予定はなさそうだが、戯曲『未練の幽霊と怪物』(白水社、2020年)は書籍として刊行されているので、興味のある人は一読されたい。

 この2作品は、やや例外的な作品だが、一般的に建築の関係者が演劇を楽しむとしたら、やはり舞台美術だろう。例えば、『未練の幽霊と怪物』において中山英之が美術を担当し、正方形の面を宙に吊ったように、思い切り抽象的なデザインによって場所を想像させる前衛的な手法もあるが、具象的な舞台としてタニノクロウの作品を紹介したい。

 これまで稲田美智子が舞台美術を手掛け、地方都市の食堂、寂れた旅館、儀式を行う宗教空間などを驚くべき解像度で再現した作品を発表しており、ことしは『虹む街』を上演している。

 これは会場となった神奈川芸術劇場(KAAT)の周辺、すなわち中華街を含む横浜をリサーチし、舞台上に古びた飲食街を出現させた。建築だけではない。実際に神奈川県に住む多国籍の人々も主要な俳優として登場し、プロとは違う独特の実在感を発揮している。この作品では、閉店の日を迎えたコインランドリーでさまざまな人々が交差するが、起承転結があるようなドラマは特に展開しない。むしろリアルに構築されたセット、つまりそこで生活する人々を見つめてきた街並みこそが主人公である。

神奈川芸術劇場(KAAT)の『王将』は、吹き抜けに仮設劇場を設置。左に見える大階段が楽屋に使われ、俳優が出番待ちしているのが外からも見える


 KAATにおける長塚圭史演出の『王将』も、特筆すべき実験をしていた。上部のフロアに大小のホールを備えているにもかかわらず、わざわざそうではない1階の場所を選び、仮設の劇場をつくったのである。通常は何もない吹き抜けの空間に舞台を組み立て、照明を持ち込み、ここで上演したのだ。かくして、いつもは表通りから演劇をやっていることが分からない建築が劇的に変化する。また大階段が楽屋代わりに使われ、スタンバイする俳優も見えていた。つまり、一時的に建築の使い方を大胆に変えてしまうことも、演劇の可能性である。



(いがらし・たろう)建築史家・建築批評家。東北大大学院教授。あいちトリエンナーレ2013芸術監督、第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展日本館コミッショナーを務める。「インポッシブル・アーキテクチャー」「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」などの展覧会を監修。第64回芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞。『建築の東京』(みすず書房)ほか著書多数。



 

  

   

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