【記者座談会】改正建築士法、改正水道法が成立 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【記者座談会】改正建築士法、改正水道法が成立

 自民党などが臨時国会に提出していた改正建築士法が可決・成立した。建築士資格試験の受験時に必須だった実務要件が撤廃され、免許登録までに満たすべき要件に置き換えられたね。
 背景には有資格者の高齢化と受験者数の大幅な減少がある。ことしの学科試験受験者数は2万5878人でピーク時の45%だった。改正を共同提案した日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会の設計3会の強い危機感があらわれている。
 成立から2年以内に施行されるため、2020年度の試験から適用される見通しだ。建築界はどうみているのかな。
 前回の改定で影響を受けた世代からは賛否両論があるものの、おおむね賛同を得ている。一方、建築教育界からは大学や大学院の予備校化など研究活動への影響が懸念されている。
 このほか3会の共同提案では、実務経験の範囲の拡大や学科試験と製図試験の切り離し、教育・実務の実態を踏まえた学科試験とCADによる製図試験の導入などを要望していた。
 今回は大枠が決まっただけで、国土交通省が施行規則などの見直しを進めている。資格取得に必要な実務経験の対象範囲の拡大、学科試験合格の有効期限の見直しを改正法の施行に合わせて適用する方向で調整している。CADによる製図試験の実施は、会場や機器など物理的な課題から中長期的な検討課題となった。
 建築設計界からは、年1回の試験の複数回実施や、構造・設備設計1級建築士の実務経験年数の見直しなどを求める意見も聞こえてくる。
 建築士の質の低下を招くという指摘もあるが、資格取得後の研さんや資格者の社会的地位の保障、独占業務の拡大など建築業界の魅力そのものを向上させることも必要だ。

今臨時国会では、建設業界の関心が高い法律が成立した

拡張・縮小、問われる事業の安定維持

 水道の基盤強化を目的とする改正水道法も成立した。
 広域連携の推進とともに、地方公共団体が水道事業者としての位置付けを維持しながら水道施設の運営権を民間事業者に売却できるコンセッション(運営権付与)方式の導入が柱となる。
 水道事業は市町村経営が原則だが、人口減少時代に突入する中で、水道料金収入の基礎となる水需要や水道事業に携わる職員数も大幅に減っていく。一方で高度経済成長期に整備された水道施設の老朽化は今後加速度的に進む。こうした課題は小規模自治体ほど深刻な状況にある。
 全国で1388ある上水道事業のうち、給水人口が5万人未満の小規模な事業者は952と7割近くを占める。拡張整備を前提とした水道事業を縮小も含め将来にわたってどう安定的に維持していくかがまさに問われているわけだ。
 絶対的にマンパワーが不足する小規模自治体をどう支えていくか。水コンサルタントはもちろん、建設コンサルタントでも将来的な地域経営やエリアマネジメントを視野に積極的に対応していこうという姿勢が目立つ。先行する下水道事業のコンセッションを含め、多様な官民連携の促進に向けた動きは今後さらに活発化するだろう。
 ゼネコンでも、前田建設がフランスのスエズ社と日本国内での上下水道事業コンセッション獲得に向けた取り組みで覚書を結んだ。「脱請負」を掲げ、高速道路の運営などコンセッションに注力している同社らしい取り組みだ。コンセッションでは、常にトップを走るという強い意思を感じる。今後、ほかのゼネコンでも関心を示す企業は出てくるだろう。

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