東京建築士会と日本建築士会連合会による、としまアンダーハイウェイ・デザインコンペ実行委員会(実行委員長・近角真一東京建築士会会長)は20日、東京都豊島区のとしまセンタースクエアで公開最終審査を開催した。テーマの「首都高速道路が作り出す空間」に建築士ら38人が45作品(応募総数125人)を提出。最優秀には法政大下吹越武人研究室+A・A・E・の「リサイクルセンターイケブクロ」が選ばれた。
最優秀の法政大下吹越武人研究室+A・A・E・(下吹越武人、浜田英明、小倉明梨、吉田育未氏、熊谷浩紀、近藤有希子、呉沛綺、万柳慧、葛西孝憲、川田優太郎、石捷倫、畠山かおり、大江和希、沖山雄大氏)の『リサイクルセンターイケブクロ』は、5年に一度の点検工事時に現れる高架下の仮設足場を常設の構造体に置き換え、さらに池袋近辺の生活の中で、使われなくなったものを新しいものに生みかえ新たな都市の風景を作り出す、リサイクルファクトリーを提案。リニア(直線的)な高架下の既存バイク駐車場はすでに人がアクセスできるため、この余白空間に新たな都市空間へのリノベーションを提示した。
優秀賞の楓設計室(加藤陽介)×flying frogs(山上洋平、山上めぐみ)の『としまアンダーハイウェイFARM』は、高速道路の振動と風圧を利用した発電でLEDを24時間照射するセラミック水耕栽培の植物工場とすることで、地産地消や食育、つながりなどさまざまな相乗効果による新たな豊島ブランドを示した。
東大千葉学研究室(千葉学、田中義之、林静言、長根乃愛、Pablo Ruiz、藤生貴子、木村太亮、村田百合、Freja Krogh-Andersen、Andreas Haupolter)の『1000mのトランジットステーション』は、首都高という街の大きな屋根の下に、低速電気バスなどスローモビリティーのためのトランジットステーションを提案。交通量が少ない時間帯に3車線のうち最も内側の車線を開放。余剰空間をつなぐことで都市全体が市街劇の舞台のように市民が使いこなす都市体験のあり方を提案した。
また、佳作の日建設計(大庭拓也、高橋恵多、陳彦安)の『としまエコロジカルハイウェイ-人のふるまいで生態系をつなぐ、社会実験としての取組み』は、高速道路の保全に使われている既設足場に単管パイプやキャッチクランプで枠組みを構成。木製の巣箱を取り付けるだけの簡易な構造で、すぐ始められる仕組み。高架軒のパネル足場面にアクティビティーを支えるインフラを設置できる仕組みとし、「失われた都市のエコロジカルネットワークの再生」を大規模修繕に用いる仮設足場の構造に対して、最小限の作法で動植物のための住処(すみか)を設えた。
同じく佳作のNWMA(久保田宗孝=イソザキ・アオキアンドアソシエイツ、坂木渡=坂茂建築設計、林誠=ハヤシマコト建築設計事務所)の『中洲で生まれる祭りの明かり』は、区主催のさまざまな文化イベントの一部として屋外劇場・展示・レセプション機能を計画。明かりという最小限の設備を挿入した高架下を屋外文化施設に位置付けた。 (敬称略)