【記者座談会】問われる業界の「働き方改革」 4団体の対応と建築設計、建設コンサルの取り組み | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

公式ブログ

【記者座談会】問われる業界の「働き方改革」 4団体の対応と建築設計、建設コンサルの取り組み

4団体ともに、働き方改革には前向きな姿勢を示すが、時間外労働の適用除外など各論については意見のくい違いが見られる


A 長時間労働の是正や、それを支える週休2日制の実現など、建設産業の「働き方改革」が問われている。国土交通省は3日、建設業4団体との意見交換会を開いたが。
B 石井啓一国土交通相は、週休2日制の実現による長時間労働の是正、現在は適用除外となっている時間外労働の上限規制の見直し、適切な賃金水準の確保という3点の取り組みを強く求めた。焦点となっている時間外労働の上限規制の導入に対しては、各団体の意見に食い違いが見られたね。
C 日本建設業連合会の中村満義会長は、週休2日制の実現へ時間外労働の上限規制(労働時間の短縮)に賛同の意志を示していた。全国建設業協会の近藤晴貞会長は「特に地域の中小企業の実情を踏まえて適切に対応してほしい」と要請し、全国中小建設業協会の松井守夫会長は「(協会として取り組みの是非を判断するための)時間が欲しい」と理解を求めた。建設産業専門団体連合会の才賀清二郎会長は「(取り組みには)時間的な猶予が必要となる」と訴えた。
A 各団体でスタンスの違いに温度差があったということか。
C それでも、近藤会長は「全建として『働き方改革行動憲章』を策定して、取り組みを加速させていく」としたほか、松井会長、才賀会長とも、働き方改革の実現に向けては前向きな姿勢を見せている。
A 働き方改革の必要性という共通認識は一致しているということだね。各団体の実情を踏まえつつ、官民が一体となった本気度が試されているといったところか。元下間や下下間の“民民関係”に踏み込んだ対応が求められることになりそうだ。
D 昨年ある大手組織設計事務所に労働基準監督署の調査が入ったといううわさをよく耳にした。そこは設計事務所の中でも労働環境の改善に力を入れていたので、他の事務所にとっては驚きだったようだ。
E ベテランの設計者からは「若いころは設計が楽しくて徹夜で働いてしまった」という声も聞かれるが、転職する若手設計者の中には去る理由に長時間労働を挙げる人も多い。厳しい労働環境を厭わない一部の「建築好き」によって支えられる業界構造になってしまっている。
D 特にアトリエ系はね。著名な建築家には一体いつ寝ているのだろうと思うような人も少なからずいる。50代で若手扱いされ、60過ぎでも「はな垂れ小僧」と揶揄(やゆ)される。社会に対峙する“個”としての建築家を目指すにはよほどバイタリティーがなければ務まらない世界だよ。
E とはいえ大手組織事務所を中心に時短勤務や午後10時には一斉に電源を落とすといった労働時間を短くする仕組みの導入も始まっている。ある意味、切りのない仕事だけにどこかで線を引くことは必要だろう。豊かな創造性が求められるからこそ、たまには早く帰って家族と過ごしたり映画や音楽を楽しむのも大切なことではあるよね。
A 建設コンサルタント業界の処遇改善策はどうなの。
F 八千代エンジニヤリングは、2018年4月新卒から初任給を引き上げるほか、定年再雇用者について、これまでの技術的な知見を持つ者もいることから、監理技術者や照査技術者を担当した実績に応じて、賞与を加算支給する。
G 大日本コンサルタントは4月からプレミアムフライデーを導入する。建設コンサルは技術と人材がすべてと言ってよい。優秀な人材の確保・育成に向け、さまざまな施策を打ち出し始めたようだ。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら