【現場から】鹿島・山岳Tワンオペ化の開発拠点 施工総研に模擬トンネル新設 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【現場から】鹿島・山岳Tワンオペ化の開発拠点 施工総研に模擬トンネル新設

 鹿島は、発破を使用する硬岩地山の山岳トンネル工事における切羽作業を1人作業(ワンオペレーション)化する技術の開発に向け、日本建設機械施工協会施工技術総合研究所(静岡県富士市)に模擬トンネルを構築した。実用化したダム工事の完全自動化技術「クワッドアクセル」に続く土木工事の『現場の工場化』を実現する開発拠点となる。

プログラムに従って自動でコンクリートを吹き付ける吹付機


 鹿島の模擬トンネルは、施工総研が保有する模擬トンネルの西側の敷地を借りて新設した。トンネル長さは55mで、掘削断面積は高速道路2車線の断面を想定して76㎡とした。既存の模擬トンネルは、ゼネコン各社が数カ月単位で借りて新技術の試験などに活用している。だが鹿島は、硬岩地山の山岳トンネル工事における切羽作業のワンオペ化の目標時期を2020年度に設定しており、開発を集中的に実施するため年単位での継続的な模擬トンネル使用が必要で、新設に踏み切った。
 1月31日に実施した試験では、事前のプログラミングに従って吹付機のノズルが自動でトンネル内の壁にコンクリートを吹き付けた。すでに自動化されているように見えるが、「まだ設定したデータに基づいて一定の法則にのっとって吹き付けているだけ」(三浦悟機械部自動化施工推進室長)という初期段階だ。今後は、最適な壁面とノズルの距離や吐出量、ノズルの振り方など熟練技能者が経験で行っている作業のデータを集め、地山に応じた最適な吹付方法を自動でシミュレーションできるシミュレーターを開発するほか、吹付厚さを計測するスキャン技術も必要で、実現に向けた道のりは遠い。
 プログラミングに従った吹付ではなく、機械が地山の状況を見て、最適な吹付厚さや吹付方法などを自ら判断しながら自動で吹き付けるといった技術を目指す道もある。だが、「まだ確立されていない知能技術の開発を待っていては、いつまで経っても実現できない。いまある技術で、機械化・自動化できる道もある」(同)というのが同社の姿勢だ。
 模擬トンネルを開発拠点としたのは、「活用できる可能性のある技術でも実現場で試験するのは難しい。模擬トンネルだからこそさまざまな技術を試せる」(同)という考え方で、青柳隆浩土木管理本部土木工務部トンネル統括部長も「ここを拠点にさまざまな実証を通し自動化を実現する」と語る。
 土木、建築を問わず、苦渋作業と繰り返し作業を機械化・自動化し、「人しかできない作業」に熟練技能者を充てるという同社の取り組みは、開発拠点を得て加速度的に進むことになる。

模擬トンネル内部

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