【クローズアップ】乃村工藝社とパナソニックが"つながり"を考える学生ワークショップ開催 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【クローズアップ】乃村工藝社とパナソニックが”つながり”を考える学生ワークショップ開催

 2020東京五輪のオフィシャルサポーター・乃村工藝社は、同じくワールドワイド・オリンピック・パートナーのパナソニックとともに、東京都江東区のパナソニックセンター東京で「未来のコミュニティを考える~復興から学び、つなぐ」を開催した。乃村工藝社が空間創造で人々の知見やアイデアをつなぐ貢献活動として展開する「ツナガリングプロジェクト」と、福島と東京の子どもや若者がつながり、未来に向かう姿を応援するパナソニックの「ツナグ・ミライプロジェクト」の共同企画として、復興の現状と東京でも起こりうる大災害に備え、これからの地域コミュニティーと防災のあり方を見つめ直した。

真剣な表情で議論を重ねた

◇85年前と変わらない避難所に広がる景色

 第1部では、ふくしま連携復興センター代表理事の天野和彦福島大うつくしまふくしま未来支援センター特任教授が、「未来のコミュニティリーダーたちへ~被災地の学びを全国へ」と題して講演。東日本大震災と福島第一原子力発電所事故後の福島県内における避難所運営の課題や改善点などを紹介した。さらに1930年の北伊豆地震と2016年の熊本地震の映像を比較。85年の歳月を経ても避難所に広がる同じ景色を示した上で、被災者の尊厳ある生活の権利を訴えた。
 第2部の「次世代の避難コミュニティ空間を考える~人を想い、時を創る」をテーマとしたワークショップ(WS)には学生ら30人が参加した。WSを主導した平田裕二乃村工藝社クリエイティブ本部本部長は、「同じ機能を持つ空間でありながら、その質によって体験は全く異なる」と強調。空間デザイナーの立場から、「単に機能的な空間ではなく、人を想い、時を創ること」に配慮した情緒的空間の重要性を強調した。

◇人を想い、時を創る情緒的空間

 WSは、東京で災害が発生し、大学キャンパスが避難所に指定された場面を想定。さらにそれぞれのグループには、さまざまな問題を抱える避難者のペルソナ(設定人格)が与えられた。学生は6班に分かれ、乃村工藝社のデザイナーとともに、第1部で学んだ被災者支援やコミュニティー形成の知識などを踏まえて、それぞれの問題に対応した避難所のあり方やコミュニティー形成の手法などを議論した。
 このうち、身体機能が衰えた82歳の老人をイメージしたAグループは、“こたつの集合体”として「シャッフルリビング」を提示。待ち時間を過ごす場から、避難所に広がる大きな交流のあり方を示した。Bグループの「チャンス・ビレッジ」は、サインボードによる情報伝達手段を駆使し、自閉症の子どもとの相互理解を深める場として避難所を活用するアイデアを紹介した。
 Cグループは、日本語がほとんど話せないブラジル人男性のコミュニティーを広げる手段として、サッカーと南米の肉料理であるシェラスコを掛け合わせたイベント「vamos brinca」を企画した。また、Dグループは、妻が妊娠中の夫婦などマイノリティーの被災者の存在を念頭に、共通、個別の空間と情報をそれぞれ提供する避難所「Inclusive Space」を示した。
 旅行先で被災した家族に自発的なコミュニケーションを促すEグループの「食でつながる! フードコート」は、旅行先で被災した家族に自発的なコミュニケーションを促す連鎖的な取り組みが評価された。Fグループの「屋上の日常」は、さまざまな種類のアレルギーを持つ人がいる中、建物の屋上空間にそれぞれの症状に応じた憩いの場とアクティビティーを提供する場をしつらえるものとした。
 総括した平田氏は、「(避難所生活を)苦しくても明るく転化しようという前向きな精神が見られたことに感動した。明るい未来がともった」と、限られた時間の中で練られたアイデアの数々を賞賛した。

プレゼンテーションではではさまざまなアイデアが寄せられた

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