【関空・残りの工事に全力注ぐ!】連絡橋、前倒しで4月復旧 空港、ハード・ソフト両面で防災機能強化 | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【関空・残りの工事に全力注ぐ!】連絡橋、前倒しで4月復旧 空港、ハード・ソフト両面で防災機能強化

 2018年9月に発生した台風21号により大きな被害を受けた関西国際空港は、連絡橋の完全復旧を目前に控えている。連絡橋を管理するNEXCO西日本は4月上旬の完全復旧を目指し、残りの工事に全力を注ぐ。また、空港を運営する関西エアポートも総合対策本部を新設するなどハード・ソフト両面から非常時の機能を強化し、今後の防災・減災に取り組んでいる。台風21号の上陸から完全復旧まで7カ月の道のりを追う。
 18年9月4日に近畿地方を襲った台風21号は、関空では観測史上1位となる最大瞬間風速58.1mを記録した。午後1時20分から午後3時50分ごろに1期島で大規模な冠水被害に見舞われた。

18年9月4日時点の浸水した関空1期島


 「台風21号越波等検証委員会」によると護岸からの越波が浸水原因の90%を占め、流入量は270万m3に上った。また、雨水排水管のポンプが停止し、海水が逆流したことも原因だった。
 同日関空では、最高潮位248cmを記録した。1期島にある高さ4mの東側護岸と6mの南側護岸の一部が損傷し、波が何度も押し寄せた。波浪の高さは4.6mと推定している。
 9月19日に立ち上げた災害タスクフォースでは護岸と地下施設、危機対応体制について検証し、その結果を踏まえ、ハード・ソフト両面で対策を進めていく。

関西エアポート災害対応訓練での総合対策本部


 ソフト面の対策は、19年4月1日からオペレーションセンターの機能を向上させる。災害発生時に「特別災害隊」を結成し、緊急対応や早期復旧にあたる。同日設立される総合対策本部は国の機関や自治体、民間企業、インフラ機関など約30機関を招集し、情報共有や連携を図る。新BCP(事業継続計画)案についても検討を重ね、19年度内の策定を目指す。
 ハード面では、1期島の護岸と防潮壁のかさ上げなどについて新関西国際空港会社が必要なかさ上げの高さなどを検証し、19年度内には方針を固めたいとしている。また、電気室などの地上への移設については移設場所を検討している。
 一方、空港と大阪府泉佐野市を結ぶ連絡橋は高潮のあおりを受けて流されたタンカーが下り線の橋桁に衝突し、2径間が損傷した。連絡橋を管理するNEXCO西日本は迅速に対応し、9月12日には損傷した約190mの2径間を撤去した。

連絡橋の橋桁撤去作業


 同月18日に石井啓一国土交通相が連絡橋の復旧時期について「ゴールデンウィークまでに完全復旧する」と発言したことを受け、同社は損傷した橋桁の整備に全力を注いでいる。撤去から約5カ月後の19年2月12、13の両日に修復した橋桁を架設し、3月7日には対面通行を解除、片側2車線の合計4車線を確保した。
 架設後の対面通行解除は当初3月中を目標にしていたが天候に恵まれ工事が順調に進んだことから、7日に早まった。6車線での完全復旧もゴールデンウィークの目標から4月上旬に前倒しとなった。

連絡橋の橋桁を架設


 損傷した橋桁の新設はIHIインフラシステムと高田機工が担当したが、NEXCO西日本によると橋桁の製作には通常1年以上かかるとのことで、半分以下の期間で製作できた要因は「部材の納期短縮と製造ラインを増やしたことが大きい」と説明した。
NEXCO西日本の酒井和広社長は2月27日に開かれた定例会見で異例のスピード復旧について「いち早く復旧までこぎ着けたことで、日本の災害対応力が世界に認められたのではないか」と語った。
 インバウンド(訪日外国人客)需要が増加の一途をたどる関西において、25年には大阪・関西万博も予定されている。訪日外国人の受け入れには関空の存在が欠かせない。1日も早い完全復旧が待たれる。

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