【コンセプトは「新しい伝統」】東京・築地のホテル「TSUKI」 設計者が込めた思いとは? | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【コンセプトは「新しい伝統」】東京・築地のホテル「TSUKI」 設計者が込めた思いとは?

 デザインコンセプトは「新しい伝統」。東京・築地に竣工したブティックホテル「TSUKI」は、内外観からその思想が明確に伝わってくる。設計は虎尾亮太氏(虎尾+謝建築設計代表)+針谷將史氏(針谷將史建築設計事務所代表)+小林麻美氏(moca design代表)。圧巻なのは外壁で、虎尾氏によると、伝統的素材の和紙を折って型をつくり、そこに現代の素材・アルミを流し込んだパネルで正面ファサードを構成、最上階まで和紙の自然な「流れ目・折り目」が浮かび上がる新しい優雅さを表現した。

設計を担当した(左から)虎尾、針谷、小林各氏(和紙の型によるアルミ転写外壁前で)

 運営は全国でホテルアライアンスを展開するアゴーラ・ホスピタリティーズ(東京都港区、クォック・ゲイリー・ヤン・クエン社長)。築地を含めると大阪など8施設818室となる。事業主のAYERS Hospitalityと運営受託契約を締結し、4月18日に開業する。
 デザインコンセプトの「新しい伝統」は、インバウンド(訪日外国人客)も強く意識している。古来からある質感や光、重なりといった美しさの伝統を継承し、いまの時代に調和させることで日本文化を親しみやすく伝えている。これによって快適さとともに新たなインスピレーションを生み出す空間になることも心がけたという。
 1階がレセプションと「Sake-Bar TABLE TSUKI」。日本各地の日本酒と肴をこだわりの器で楽しめる。客とホテルの接点の場として、大きなオーク材のテーブルを設置した。機械による手彫り感覚の模様が特徴だ。
 2階には青森ヒバを使った貸切風呂「YUYA/湯屋」を2つ用意した。日本人の日常に根付いている風呂文化が体験できる。風呂上がりには同じフロアに「YUAGARI」(湯上がり処)もある。

2階の貸切風呂「YUYA/湯屋」

 3階から10階が客室。プレミアム、デラックスツイン・ダブルベッドルームには、ひのき風呂が設置され、オーク材がふんだんに使われるなど、上質な空間をデザインしている。

ヒノキ風呂が設置された客室

 外壁の技術は、手織りの和紙の型によるアルミ転写で、これについて虎尾氏は「アルミは工業素材だが、温かみのあるファサードになったのではないかと思う」と述べる。この外壁に象徴されるようにホテル全体に「手あかとかムラのようなものを積極的に取り入れている。それが心地良いのではないかと考えている」と言う。
 規模はS造10階建て延べ1164㎡、31室(7タイプ)。建築施工は小川建設。

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