【記者座談会】首都圏大手民鉄・大手ディベロッパーの設備投資が活発に | 建設通信新聞Digital

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【記者座談会】首都圏大手民鉄・大手ディベロッパーの設備投資が活発に

今秋完成に向け駅ビルなど周辺開発が進む京王線調布駅。地下化した連続立体交差事業が起爆剤となり、再開発などに弾みがついた


A 関東の大手民間鉄道の2017年度設備投資計画が出そろった。また、大手ディベロッパーは中期経営計画を発表した。これをもとに、今後の市場動向をみてみよう。
B 民鉄9社の鉄道事業の投資総額は3714億円。大規模自然災害に備えた耐震補強などに加え、20年東京五輪を見据えた駅リニューアルやホームドア整備の前倒しなど、前年度を上回る積極的な設備投資となっている。
C 連続立体交差事業の取り組みも特徴的だ。東武鉄道が浅草~東京スカイツリーエリアの早期事業化に向けた取り組みを強化する。西武鉄道も新宿線の野方~井荻間、井荻~東伏見間で早期事業化の準備を進めるなど、新規事業化に向けた動きが出てきた。
B 沿線自治体も再開発など駅周辺のまちづくりの検討を加速している。東京都と沿線の区・市、鉄道会社が一体となり“線的整備”を“面的整備”に直結したまちづくりを推進する姿勢が以前よりも強くなっている。
D ところで、10年ぶりに日光東照宮へ行って、外国人の多さに驚いた。欧米や東南アジアなどいろいろな国から家族連れ、カップルといった少人数の観光客が目立ち、バスツアーの団体ではなく電車で来ている感じだった。鉄道会社にとって固定客の通勤・通学は、少子高齢化や人口減少で増加が見込めない。一方、インバウンド(訪日外国人客)は、4月に単月で過去最多を記録するなど有望な市場。鉄道各社は、大都市周辺の観光地でホテルや集客施設などの設備投資を増やすのではないか。
B 確かに、東武グループは日光・鬼怒川と東京スカイツリータウンで国内外から集客施策を展開している。京王電鉄も高尾山周辺で駅リニューアルや温浴施設を整備した。小田急グループは、箱根や江ノ島・鎌倉、新宿を広域集客エリアとして価値向上施策を展開している。
D 西日本鉄道グループはホテルや住宅開発を全国展開している。関東以外の民鉄も含めて不動産事業の動向も注視する必要がある。
A 一方で、ディベロッパーの投資意欲も旺盛だね。
E 背景に好調な業績があるのは言うまでもないが、金利水準の低さも大きな追い風だ。三菱地所グループの中期経営計画は、19年度までの3年間で2兆0500億円を投資する方針を示している。国内ビル事業に5000億円、拡大を目指す海外事業には4000億円を投資する計画で、海外事業が国内ビル事業に匹敵する。
F ゼネコンと同様、ディベロッパーも海外事業の強化を鮮明に打ち出している。投資先として安定している米国に加え、東南アジアなども経済成長の伸びしろの大きさに期待感がある。15-17年度の3年間で2兆4000億円の投資を計画している三井不動産も、国内設備投資と海外事業は同額の5500億円に設定している。
E 三菱地所グループの中計ではこのほか、ビジネスモデルの革新に向けた横断的な投資枠として1000億円を確保した。空港運営などの新規事業を想定しているが、M&A(企業の合併・買収)なども含めて柔軟に対応する方針だ。
F 東急不動産ホールディングスも総額1兆2300億円の新中計で、M&Aなどを視野に入れた「戦略投資枠」として300億円を盛り込んだ。不動産業界では、介護や学生寮などの分野でM&Aが進んでいる。今後は、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット化)の活用も加速する見通しだ。

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