【記者座談会】関東大手民鉄の設備投資動向 連続立体交差事業が加速、新規不動産投資も | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【記者座談会】関東大手民鉄の設備投資動向 連続立体交差事業が加速、新規不動産投資も

A 関東の大手民間鉄道会社の2018年度設備投資計画が出そろった。これをもとに、市場動向をみてみよう。
B 民鉄8社の鉄道事業の投資総額は、計画ベースで前年度比6.6%増の2329億円となった。過去最高額の東京地下鉄を加えた9社の総額では13.3%増の4209億円と積極的な設備投資となっている。大規模自然災害に備えた鉄道施設の耐震補強に加え、20年東京五輪を見据えた駅リニューアルやホームドア整備などに取り組む。観光案内所の新設など、訪日外国人観光客への対応も特徴的だ。
C 東京地下鉄は銀座線で移設工事が進む渋谷駅のほか、大規模リニューアルとして新橋、青山一丁目、外苑前の各駅改装工事に着手する。東西線の茅場町、木場、南砂町各駅の改良工事や、飯田橋駅~九段下駅間の折返し線整備も順次本格化する。
D 連続立体交差事業の取り組みにも注目したい。京王電鉄が京王線(笹塚駅~仙川駅間)高架化に向けた工事ヤード整備に着手する。西武鉄道は新宿線中井~野方間の地下化、東村山駅付近高架化の工事、東武鉄道はとうきょうスカイツリー駅付近高架化や竹ノ塚駅付近高架化、東武アーバンパークライン清水公園~梅郷間の高架橋工事を進める。京急電鉄も大師線(東門前駅~小島新田駅間)地下化、京成電鉄は押上線(四ツ木駅~青砥駅間)高架化、相模鉄道は星川駅~天王駅間の18年度上り線高架化に向けた工事を推進する。
C 連立事業を進める東京都は今後、JR埼京線(十条駅付近)、京浜急行本線(泉岳寺~新馬場駅間)、西武新宿線(野方駅~井荻駅付近)、同(井荻駅~東伏見駅付近)、東武東上線(大山駅付近)の4路線5カ所総延長約13㎞で事業化を目指している。事業はまだまだ続くようだ。
D 連立事業は、沿線の自治体にとっても、まちづくりなどで大きな“起爆剤”となる。事業化を見据えた再開発など駅周辺のまちづくりの検討を積極的に進めている。まちづくりが連立を後押しするケースも多い。都と沿線区・市、鉄道会社が一体推進するまちづくりが強まっている。
E 小田急電鉄は3月から小田急小田原線で複々線の運行を開始した。京王電鉄でも将来的に、笹塚駅~つつじヶ丘駅間約8.3㎞をトンネル構造による増線を計画している。

駅周辺開発の一環で改良工事が進む東京メトロの渋谷駅。現在の駅から東側に約130m離れた明治通り上空に移設する


A 中・長期的な視点から今後の動向を探ってみよう。
E 各社がまとめた中期経営計画などから方向性が見えてくる。東急電鉄は新空港線・多摩川流域、相鉄・東急直通線沿線など5つの重点エリアで駅周辺に重点投資する。開発が進む渋谷駅周辺は、将来的にSHIBUYA109や東急百貨店本店などの再開発なども視野に入れている。東急ホテルズも店舗を拡大し、18年度に3店、19、20年度に各1店を新規開業する。
C 小田急電鉄も今後3カ年の投資額の3分の1以上を不動産開発や不動産取得、新規事業開発、M&A(企業の合併・買収)の推進など成長投資に充てる。都心、富士、箱根、伊豆、江の島、鎌倉などの沿線・周辺地域と、京都、大阪、九州、沖縄、さらに中国、東南アジアを想定し、リゾート地や大都市でホテルを出店する。新宿駅西口再開発計画の策定・推進にも注視していきたい。
E 京王電鉄は用途変更やリニューアルによる既存資産の活用、リノベーション分譲や投資マンションに取り組む。老朽化したストックを再生するシェア型ホテル事業は地方中核都市を中心に20年度までに10店舗体制を目指す。

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