【記者座談会】税制改正固まる/半導体製造施設建設を支援 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【記者座談会】税制改正固まる/半導体製造施設建設を支援

A 2022年度の税制改正の基本方針となる与党の税制改正大綱が正式決定したね。

B 目玉は賃上げした企業に対する法人税の軽減措置の強化だ。現政権発足後初となる税制改正で、岸田文雄首相が掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向けた仕組みを打ち出した。

C 従業員の給与の増額だけでなく、教育訓練費の増加でも控除率を積み増すことができる。担い手の確保・育成に向け、技能者の賃金上昇・処遇改善を目指す建設業にとっては時宜にかなった拡充策と言える。

D 今後の焦点は、年明け以降に発表される次の公共工事設計労務単価だ。賃上げができる環境にならなければ、軽減措置はまさに絵に描いた餅。建設業が成長と分配の好循環に乗れるかどうかの分岐点となるだろう。

A 今夏の税制改正要望で焦点になっていた住宅ローン減税についてはどうか。

B 控除率を1%から0.7%に引き下げた上で、控除期間を10年から13年に延ばす4年間の延長が決まった。現下の低金利情勢から生じるいわゆる“逆ざや”状態が問題視されたことから、控除率を引き下げたが、制度改正による市場の冷え込みを防ぐため、控除を受けられる期間を延長し、総額を確保する狙いだ。
C ローン減税にはカーボンニュートラルの視点を新たに反映した。省エネ基準を満たさない住宅の場合、適用対象となる住宅ローン額の上限が3000万円であるのに対し、長期優良住宅・低炭素住宅は最高で5000万円を上限とする優遇措置を設ける。

D 逆ざやへの対応やローン減税をてこにした環境対策は結構だが、コロナ禍はまだまだ予断を許さない状況だ。制度改正によって、肝心の住宅市場へマイナスの影響がないことを願いたい。

自民・公明両党は10日、22年度の税制改正大綱を決定した

安定生産確保へ「国策」で取り組み

 
A ところで、政府が国内での先端半導体製造施設の建設を財政面で支援する制度が創設されることになったね。

B 21年度補正予算関連法案として開会中の臨時国会に提出した「5G法(特定高度情報通信技術活用システム開発供給導入促進法)およびNEDO法(新エネルギー・産業技術総合開発機構法)改正法案」のことだね。萩生田光一経済産業相は、一般的な民間事業支援の枠を超えた「国策」として取り組むとした。キーワードはコロナ禍で加速する「デジタル化」と「経済安全保障」だ。

C 計算を担う先端ロジック半導体など経済安全保障上、特に重要な半導体の国内での安定生産確保と日本の特定半導体関係産業の発展につなげる狙いがある。

B 法案では、5G法で事業者の製造施設建設などの計画を国が認定する制度を創設し、NEDO法改正によって基金を新たに設け、基金から補助金を支出する。経済産業省が、一定期間以上の継続的な生産や需給逼迫(ひっぱく)時の増産要請に応じることなどの認定基準を満たすか審査して計画を認定する。

C 認定を受けると、NEDOに設ける「特定半導体基金」から設備投資に使える補助金を複数年度にわたり交付する。日本政策金融公庫のツーステッププローンなどの金融支援措置も受けられる。

D 補正予算案には「先端半導体生産基盤整備基金」として6170億円を計上し、必要な資金の最大2分の1を補助する。台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に建設する新工場が第1号となる見通しだ。経産省によると、基金では「数件の支援を見込んでいる」という。この財政支援は、製造施設建設工事を担う建設業界としても注目だね。

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