【記者座談会】岸田新内閣が本格始動/単年度主義の是正、処遇改善にも期待 | 建設通信新聞Digital

5月20日 月曜日

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【記者座談会】岸田新内閣が本格始動/単年度主義の是正、処遇改善にも期待

A 岸田内閣が発足し、岸田文雄首相が初めての所信表明演説に臨んだ。新内閣をどうみる。

B 建設産業への影響が大きい防災・減災、国土強靱化については強化することを明言した。施工時期の平準化を進める上で障壁となっていた財政の単年度主義の弊害是正に言及したことも評価できる。

C 国土強靱化については気になる点がある。自民党が今秋の衆院選に向けて発表した公約では、「5か年加速化対策の着実な実施」とあるだけで、強化や拡充といった表現がなかった。

B 確かに、公約の国土強靱化の項目で充実・強化と明記されたのはTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)など組織体制の部分のみだった。

C 5か年加速化対策は決定した以上、着実に実施するのは当たり前だろう。災害対応に当たる組織体制の充実も急務だが、激甚災害が頻発化する中で、対策そのものを拡充する視点も必要だ。

A 国土交通相に就任した斉藤鉄夫氏はどうか。

D 赤羽一嘉前国交相からバトンを引き継ぎ、2年ぶりの国交相交代となった。福田康夫、麻生太郎両内閣で環境相を経験していることから、環境政策には明るいとの評だ。

B 専門紙の就任インタビューでも、入札で環境配慮の取り組みを評価する制度について「今後、世界標準となることも考えられる」との自説を示し、同省職員も舌を巻いていた。

D ゼネコン勤務を経て議員になったことも有名だ。研究畑が長かったようだが、入社1年目にあった職方とのエピソードを披露するなど、建設業への理解は深い。担い手の確保に向けた処遇改善の動きを止めないためにも国交省が果たす役割は大きい。斉藤国交相にはそれができる基盤があるはずだ。


8日の衆院本会議で所信表明演説する岸田首相。「新しい資本主義」を旗印に「成長と分配の好循環」を提起した

「成長と分配」好循環へ政策動向注視

A 岸田新内閣誕生を受けて、日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会の建設業3団体のトップもコメントを出した。

E 長期化する新型コロナウイルス感染症の影響と、それに伴う景気停滞からの脱却とともに、激しさを増す気象変動を背景とした防災・減災、国土強靱化対策の推進に共通して言及している。

F 日建連の宮本洋一会長は、現下の社会経済情勢を「かつてない国難」と表現し、その打破に向けて、強いリーダーシップの下で「成長と分配の好循環による日本経済の成長に取り組んでいただきたい」との考えを示した。また、国家としての持続性を高めるために、「安全・安心で豊かな国土づくりを強力に進めることが不可欠」とも指摘している。

D 全建の奥村太加典会長は地方創生にも目を向け、生活インフラを始めとする「わが国の社会資本整備にかかる諸課題への着実な取り組み」に期待を寄せている。

E 全中建の土志田領司会長は、コロナ禍で「エッセンシャルワーカーとして位置付けられる地域中小建設企業の重要性がさらに増している」と強調した上で、奥村会長と同様に、地域建設業が今後も地域の守り手として貢献できる対応を求めている。

F ある団体の幹部は「(これまでの政府が)成長分野に投資するという新自由主義に振れ過ぎていたため、建設業や農業など基盤産業への投資がおざなりになっていた」として、新たな資本主義を通じた揺り戻しを見込んでいる。ただ、建設業の立場で言えば、強靱化対策だけでなく、新内閣が国際競争力、地方創生の観点からも建設投資を推進するのかは現時点であまり見えてこない。当面は政策動向を注視する必要がありそうだね。



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