【クローズアップ】乃村工藝社×パナソニックセンター東京 協働と信頼で新たな価値創造へ | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

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【クローズアップ】乃村工藝社×パナソニックセンター東京 協働と信頼で新たな価値創造へ

 パナソニックのコーポレートショウルーム「パナソニックセンター東京」(東京都江東区)で、乃村工藝社が2006年から東京五輪関連の空間プロデュースを担当。来場者の興味を喚起する体験型コンテンツを盛り込み、五輪開催に向けた機運を高めている。その企画・演出の中心的存在が乃村工藝社第一統括部クリエイティブ本部の山口茜デザイン1部グループ2グループリーダーと、パナソニックセンター東京NEXTコミュニケーション課の那須瑞紀係長だ。2人に協働で創造する空間展示に込めた思いを聞いた。

山口氏(左)と那須氏

 パナソニックセンター東京は、同社の各種商品を展示、体験ゾーンも備えた総合情報発信拠点。同社は映像音響機器カテゴリーにおけるワールドワイドオリンピック公式パートナーとして、五輪・パラ五輪をより身近に感じてもらうため、「スポーツ」「文化」「教育」の3本柱をテーマに、東京2020公認プログラムとして、さまざまな常設展や企画展を展開している。
 2人の出会いは10年ほど前。「一緒に上司にプレゼンする立場だった」(那須氏)ことにさかのぼる。山口氏が産休中の時も「復職することが分かっていたので待っていた」と、那須氏は絶大な信頼を寄せる。それも2人が“合宿”と呼ぶ長時間のブレインストーミングで、コンセプトやネーミングなどの“ぶれない芯”を固め、「お互いが中途半端な判断をした時はけんかになる」(山口氏)という関係だからだ。協働するデザイナーやクリエーターも気心の知れた関係だが、「時間がなくても一切の妥協を許さない職人気質の人ばかりで、一瞬の気の緩みも許されない」(同)という。「与件をクリアするだけはでなく、企画段階から参画する楽しさを知った」(同)と、一連のプロジェクトを通じてデザイナー、プランナーとしての新境地を切り開いた。
 ショウルームという性質から「最新技術の導入はマスト。家電の訴求だけにとどまらず、伝えたいムーブメントがあり、そこに技術を落とし込んでいる」(那須氏)、「技術をしっかりと理解して、さりげなく取り入れることを心掛けている」(山口氏)と、BtoB、BtoCの2軸を念頭に2通りの企画書をつくる。
 15年から常設展示している「Active Learning Camp」は、オリンピズムの精神や価値を子どもたち一人ひとりが自主的に考えながら楽しく学べる展示空間だ。世界地図を見ながら各国の衣・食・住の情報を知る「多様性マップ」や、相互理解や平和などのテーマを取り上げる「アクティブ・ラーニング・ツリー」、来場者がメッセージを残せる「Go to 2020」など、最新技術を活用しつつ、学んだものを伝えるアクティブラーニング(能動的学習)の考えを取り入れた。ワークショップやガイドツアーも好評で、地元江東区のオリンピック・パラリンピック教育プログラムと連携し、区内の小学校5年生が年間8000人以上訪れている。

楽しく学べる空間Active Learning Camp

 また、「文化のちから-くらしを彩る、ニッポンの美意識」では、日本の四季の美しさを切り口に暮らしにまつわる伝統文化を色・衣・食・住の観点でまとめた。「運営側として、アテンドする立場で知っておく必要がある。裏話なんかも喜ばれる」(那須氏)と、山口氏とともに日本の文化をとらえ直し、動的グラフィック演出や色空間演出といったデジタルソリューションと、着物などのアナログを掛け合わせて表現した。

日本の伝統文化を色・衣・食・住の観点からまとめた

 東京五輪開幕500日前の3月12日に始まった特別展示「Diversity-多様性を彩るピクトグラム」は、今大会のピクトグラム(絵文字)を制作した廣村正彰氏を中心とする開発チームと、制作に当たっての“こだわり”を紹介。同センターにゆかりある競技をスタンプにした「ピクトスタンプ」や、お題にあわせて自分がピクトになれる「みんなのピクト」、大会新競技の「空手」のピクトを立体化したフォトスポットなど、「ただ通り過ぎるのではなく、必ず動作を取り入れること」(山口氏)で、来場者に印象付けるとともに、記憶に残る展示を心掛けた。この先も「ワクワクとドキドキがいっぱい」の空間展示を通じて、世界に誇れる新たな価値創造を目指す。

記憶に残るDiversity-多様性を彩るピクトグラム

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