【隈研吾氏・最終連続講義】全10回・最終講義の初回テーマは「集落から始まった」 2回目は5月25日 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【隈研吾氏・最終連続講義】全10回・最終講義の初回テーマは「集落から始まった」 2回目は5月25日

 2020年3月末で11年にわたる教員生活を終えて東京大学教授を退官する建築家・隈研吾氏の最終連続講義「工業化社会の後にくるもの」が20日、東京都文京区にある同大学安田講堂で始まった。全10回にわたる最終講義の初回のテーマは「集落から始まった」。東大大学院で師事した建築家の原広司東大名誉教授らを招き、ともに取り組んだ西アフリカの集落調査を振り返りながら、自らの原点を見つめ直す内容となった。

左から隈氏、原氏、セン氏

 大学院進学時は「建築をポジティブに考えられない時期だった」という隈氏は、当時、東大生産技術研究所の中でも“異端”だった原研究室に所属し、そこで原氏に同行した西アフリカ・サハラ砂漠の集落調査が「人生の方向性を見つけることができた旅だった」と回顧した。
 原氏は、トラブルを含めたさまざまなエピソードを交えながら、アルジェリアやコートジボアール、ニジェールなどで行った集落調査の概要を紹介。「冒険であり、スポーツでもある。若い人たちにもいつかやってほしい」と呼び掛けながら「日本の原始の風景もオリジナルではなく、世界のどこかに通じているものであり、似たもの同士をつなぐことで、ネットワークできることがわかった」と、ライフワークとしている集落調査の意義を語った。
 隈氏も「原先生は、直線がない世界を一瞬で図面化されていた。そのスピード感と、集落を探り当てる直感、物おじしない姿勢が人への信頼感は世界共通といういまの自分の姿勢に生きている」と、恩師から学んだ姿勢が世界での仕事につながっていることを強調した。
 さらに、大学院生時代に原氏が設計した住宅で施工者に逃げられ、学生を集めて施工した話を紹介。「朝6時から夜中の12時まで現場でコンクリートを練ったりしていた。原先生からは“楽しいだろ”と言われたが、いまにして思えば貴重な体験だった。自分の手でものをつくることの楽しさに目覚めたきっかけだった」と、その経験が自らの研究室でパビリオンづくりを通じて学生に施工を体験する取り組みとして受け継がれていることを示した。
 最終連続講義の2回目は、5月25日に社会学者の上野千鶴子東大名誉教授と社会デザイン研究者の三浦展氏を迎え、「家族とコミュニティの未来」をテーマに行う。

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