【隈研吾氏・最終連続講義】「コンクリートから木へ」をテーマに 内田氏と深尾氏を招いて開催 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【隈研吾氏・最終連続講義】「コンクリートから木へ」をテーマに 内田氏と深尾氏を招いて開催

 2020年3月に東大教授を退官する隈研吾氏の最終連続講義の第3回は「コンクリートから木へ」をテーマに、学部生時代の恩師である建築家の内田祥哉東大名誉教授と研究室の先輩となる深尾精一首都大学東京名誉教授を招いて開かれた。隈氏は内田氏から「木造は未来的なシステム」であり「未来へのヒント」であることを学んだと述懐したほか、「原理主義的ではなく、自由な発想で考えていいのだということを教えていただいた。それがいまも背中を押してもらっている」と語った。
 内田氏との出会いについては「それまでどちらかというとプレハブの人と言われていたが、会ってみてアカデミズムとはこんなにもチャーミングなのかと驚いた」という。内田研究室では「木造は過去のものだと思っていたが全然違う。現代の技術の根本に関わる課題であり哲学的なものでもある。僕の木造の考えを根本から変えてくれた」とも。
 いま8割方完成した新国立競技場についても「内田先生に習った小径木を使うのが日本の木造の基準であるということが新国立競技場の木の使い方の基本になっている」とし、「細い木を使うことはデザイン的な意味以上に環境上の意味が大きい」と強調した。
 「隈建築は隙間建築」という内田氏の指摘には、「最初から隙間を前提に狙ってやると隙間が目立たなくなる。それが僕の作法であり、意図的に隙間をつくり、人体のように細胞を集めて建築をつくっている」と応えつつ、「柔らかさを建築に持ち込んだのも内田先生が初めてではないか。柔らかい素材に目覚めたのも内田先生のおかげです」と謝意も表した。
 最終連続講義のメインテーマである「工業化社会の後にくるもの」について、深尾氏は「隈さんの建築には産業化されていない面白さがある。建築以外の分野では産業化されたものでないと成立しないが、産業化の法則ではないところで面白いことができるのが建築の特権であり、そのバランスをいかに取るかだ」と指摘。内田氏は「大量生産も一品生産も両方大事だ。江戸時代にはお金と手間をふんだんに使う普請道楽が誕生した。大量生産は道楽からは出てこない。人手を増やしていくこともこれから考えなければいけない時代になってくる」との考えを示し、隈氏も「いろいろなつくり方がきちんと共存できる社会でなければいけない」と応じて締めくくった。

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