【関西を活性化!】万博開催を視野に在阪建築4団体が共同提言書『ARCHI-4 KANSAI』を発表 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【関西を活性化!】万博開催を視野に在阪建築4団体が共同提言書『ARCHI-4 KANSAI』を発表

 在阪建築系4団体(大阪府建築士会、大阪府建築士事務所協会、日本建築家協会近畿支部、日本建築協会)は4月11日、まちづくりに向けた共同提言書『ARCHI-4 KANSAI』を発表した。2025年の万国博覧会開催を視野に入れ、建築によって関西を活性化させる「人間・空間・時間をつなぐ」未来に向けた提案がされている。 提言書は、「ひとのつながりが創り出す未来」「魅力あふれるまちを築く活力の創造」「環境・文化を持続し未来につなぐ」「時間がつむぐ価値の継承と進化」「関西の強みを生かした価値の共創」「成熟社会の暮らしと安らぎの享受」の6項目で構成する。

(前列左から)委員会に参加した所千夏氏(アトリエCK)、徳岡委員長、三谷帯介氏(鹿島関西支店)、(後列左から)設楽貞樹日本建築協会会長、井上久実JIA近畿支部長、岡本森廣大阪士会会長、戸田和孝大阪事協会長

◆ひとのつながりが創り出す未来
 誰もが暮らしやすく支えやすいまちづくりのために、多様化・多文化社会におけるダイバーシティーの実現を目指して、▽コミュニティーの形成▽誰もが過ごしやすい生活拠点づくり▽新旧住民による地域コミュニティーの育成–に建築家が積極的に関与することを提案している。
 また、小中学生を対象にした出前講座などによる人材づくりや日本建築協会のU-35委員会など若手建築家の活動を支援する取り組みの必要性、地域で暮らす人々をサポートし、日常的に見守り続ける「エリアアーキテクト」の存在の重要性を説いている。

◆魅力あふれるまちを築く活力の創造
 大阪の水辺空間・親水空間の整備やAI(人工知能)を導入した水上交通の整備による「水都大阪」の復活や、都心部での歩道の拡幅やバリアフリー化、ひさしのある空間整備、無電柱化、LRT(次世代型路面電車)、BRT(バス高速輸送システム)の導入などによる回遊性の向上、都心部の広場整備による「ひと中心のまちづくり」を提唱している。
 加えて、市民に開かれ利用される公園を目指した持続可能なマネジメントへの建築家の関与や立地ポテンシャルを生かした駅、駅周辺の活性化、駅ナカ、駅前、高架下スペースの有効利用・運営のあり方、地域の中心を担う駅のあり方の検討を求めている。

◆環境・文化を持続し未来につなぐ
 建築材料としての木材利用を促進し、森と文化を守り自然と共生する住環境の創造やスケルトン・インフィル手法を導入し時代に即した柔軟性のある住空間の整備、ひとの見守りなどにIoT(モノのインターネット)を活用した健康都市の実現、WELL認証の取得推進、将来の担い手となる新たなリーダーの育成も含めたSDGs(持続可能な開発目標)の関西からの発信を盛り込んだ。

◆時間がつむぐ価値の継承と進化
 伝統芸能や娯楽、プロスポーツなど関西が抱える文化的財産を生かすため、「ほんまもん(本物)」が持つ力に生で触れる機会・場の創出や都市の中に公共性のある開放的な空間を設け、土地や建物のポテンシャルを高める取り組みのほか、歴史的なまちなみと文化を生かした景観の形成につながるまちなみ保全、空き家対策、地域リノベーション、ヘリテージマネジャーの育成・活用、地域に根差した活動を担うアカデミーの創設などを提案する。

◆関西の強み生かした価値の共創
 関西こそがグローバルな技術革新をけん引する場であり、大阪・関西万博がその引き金になるととらえ、大学・地域・企業が連携した「おもろい(面白い)まち」づくりや連携を支援するプラットフォームの整備を提唱する。
 また、森之宮・桜ノ宮地区などの都市力を伸ばす容積率などの規制緩和、大阪城での公設民営による地下博物館の整備、近つ飛鳥風土記の森や百舌鳥古市古墳群周辺の景観規制強化などによる魅力の創造、自治体の建築関係法令の統一と許認可のスピード化により世界から活力を呼び込む環境整備を求める。

◆成熟社会の暮らしと安らぎの享受
 充実した鉄道ネットワークを生かす沿線全域のコンパクトシティー化(関西型コンパクトシティー)やドイツで導入されているシュリンキングポリシー(創造的縮合政策)の考え方を取り入れた自然とゆとりがあり安全・安心を確保するまちづくりと、それによる郊外に流出した人々の沿線への呼び戻しを提唱する。
 また、バリアフリー化や災害に強いまちなみ・コミュニティーの形成にも建築家が関与し、住民にも来訪者にもやさしい関西のまちづくりを訴える。

◆京阪神間をどう埋めるか
 提言の検討は各団体から4人の若手会員が参加した委員会が行った。委員長を務めた徳岡浩二大阪府建築士会理事(徳岡設計社長)は「建築家として関西のために何ができるかまとめた。“ARCHI-4″の4は、4団体の“4″と“For”の意味を兼ねている。関東では東京が中心。一方、関西は京阪神の個性がそれぞれ立っており、その都市間をどう埋めるかが課題だ」と話す。
 提言書は関係自治体に周知するほか、各団体の活動で活用する。また、提言書の内容を広めるシンポジウムの開催も計画しており、6月4日には第1回を大阪で開く予定だ。

提言書の表紙

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら