【木製ルーバーで外壁面にリズム】隈研吾氏設計の桐朋学園音楽ホール 内部は「木の折り紙」 | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

公式ブログ

【木製ルーバーで外壁面にリズム】隈研吾氏設計の桐朋学園音楽ホール 内部は「木の折り紙」

 木構造と音響仕上げ面を兼ねる革新的なCLT(直交集成板)ホールとなる桐朋学園(東京都調布市)の「(仮称)桐朋学園宗次ホール」は、基本設計とデザインコンセプトが隈研吾建築都市設計事務所、実施設計と施工は前田建設工業・住友林業JVが担当。木構造設計監修は稲山正弘氏(ホルツストラ/東大教授)、音響設計監修は唐澤誠氏(唐澤誠建築音響設計事務所)が名を連ねる。

木の線によるリズムがつくるファサード

 隈氏は、かつての仙川キャンパスが木造校舎だったことを踏まえて、「木が織り成す音楽の場」というコンセプトを提示。外観は木製ルーバーで全体を覆うことで、「楽器の弦のように折れ線をつくり、面の角度を変化させることで、壁面にリズムを生み出す」という。隈事務所と前田建設工業がタッグを組んだ同キャンパス1期工事で整備した新校舎の大庇(ひさし)と呼応するトライアングルの学生エントランスを備える。
 配置計画では、大きなステージを持つホールを西側に、講義室10室と楽屋含むレッスン室8室を設ける。音階のように木が積層するホワイエは、日常は学生ラウンジ、イベント時はホワイエコンサートも開ける天井の高い空間となる。「木の響きの中で音楽を学ぶことを大事にした」(隈氏)と、講義室も木がアクセントとなる温かみのある空間を企図している。
 音が反射する木の折り紙につつまれた音楽ホールの設計に当たっては、30分の1サイズの音響実験用模型で可聴化シミュレーションを実施した。「フラッター効果が起きないように、壁に角度をつけることでCLTが構造的にさらに強くなった」(隈氏)ことが特徴だ。

30分の1サイズの音響実験用模型(基本設計時)

 唐澤氏によると、折板の“山谷”の連続で構造体ができているCLT工法では、音響からみた拡散体の形状は1つの山谷のスパンの15%以上つけることが一般的だが、今回は17m以上のスパンを飛ばすため、出入りが50cmぐらいあることから「音の特徴をつくりかねない」と懸念。実験では、倍音効果の反射音が現れたものの、折り紙型の拡散体を側壁や天井に取り付けることで、固有の反射音を消した。
 約8億円の建設資金を寄付した壱番屋創業者の宗次徳二氏は、「今回の発表をずっと楽しみにしてきた。クラシック音楽に支えられた人生だった」と振り返った。前田建設工業の前田操治社長は、会社を挙げた木造建築への取り組みを「木の需要を増やし、林業や地方経済の活性化など社会課題への挑戦でもある」と強調。「これまでの経験と知識に、音環境や木造・木質化などにも力を入れている新しい技術研究所の知見を入れながら、木の特色を生かした高い品質のホールを完成させたい」と語った。

建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら