大手ディベロッパーなど開発事業者が駅を“つくる”ケースもある。かぎを握るのがまちとの一体開発だ。
自動車に依存せず、公共交通に重点を置いた都市開発にTOD(トランジット・オリエンテッド・ディベロップメント)という概念がある。そこでは駅とまちは一体で開発しなければならず、駅はまちの顔でなければいけない。加藤昌樹都市開発本部都市計画2グループ課長は、「開発事業者は、(自分たちが)将来その駅を使う時にいかに便利にするか」という利用者視点を持つことが重要という。
民間初の大規模再開発事業となるアークヒルズが完成して30年超。働く・住む・学ぶ・遊ぶ・憩うなどさまざまな都市機能が複合したコンパクトシティーをつくり続けてきた同社は、まちづくりに必要な嗅覚に優れているとも言える。
東京メトロ銀座線虎ノ門駅の17年度の1日当たりの乗降者数はおよそ11万7000人。朝のピーク時はホームへの入場規制が実施されるほど混雑する。そこで周辺再開発に合わせて計画されたのが、日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ」だ。駅名が虎ノ門ヒルズに決まったことで、名実ともに駅がまちと一体となった。
内閣府の統計では、日本の総人口は10年の1億2806万人をピークに減少傾向に転じ、55年には1億人を割ると予想する。しかし一方で、東京23区に目を向けると1996年以降は右肩上がりだ。港・千代田・中央の都心3区では、アリの巣のごとく張りめぐらせた鉄道インフラがもたらす移動手段の多様化・利便性が改めて認識され始め、ライフスタイルの変化がもたらした公共交通志向型のまちづくりはさらに加速する。
まちは変化と更新を繰り返す。そして、鉄道事業者とディベロッパーは従来の専門領域を超え、シームレスな協業体制に向かっていくだろう。インフラには当然ながら維持管理が伴う。ピークだけを照準にしたハード整備だけでなく、ピークの平準化を推進するなど社会全体のマネジメントや行政のリーダーシップにも一層の期待がかかる。
(山口浩平)