【CIMの道筋 設計者の挑戦(1)】中央復建コンサルタンツ/モデルを「使う」組織へ | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【CIMの道筋 設計者の挑戦(1)】中央復建コンサルタンツ/モデルを「使う」組織へ

 国土交通省が直轄事業でBIM/CIMの積極活用に乗り出し、呼応するように建設コンサルタントの動きにも慌ただしさが出てきた。2019年度の活用業務・工事数は前年度の200件超を大きく上回り、倍増の400件規模に達する見通し。建設コンサル各社は体制を拡充し、急増する活用業務への対応強化に乗り出す。その道筋には、次のステージを見据えた戦略が見え隠れする。

施工シミュレーションで使うCIM実践施

 「これからはモデルを使うフェーズに入る」。BIM/CIMの業務実績が累計300件にも達する中央復建コンサルタンツの森博昭総合技術本部CIM推進室室長は、そう力を込める。09年から新入社員に3次元設計教育をスタートするなど、早くから社を挙げてCIM推進にかじを切り、社内の対応力を引き上げてきた。毎年30件規模のCIM関連業務をこなす。
 同社は道路、鉄道、構造、環境防災の各部門から推進リーダーとともに3次元CADインストラクターリーダーを組織した『CIM系技術ミーティング』を発足し、拡大するBIM/CIMの流れに真正面から向き合ってきた。CIM推進室と連携しながら最新動向を把握し、所属部門と情報共有を図るとともに、人材育成の中心的な役割も担っている。
 CIM新入社員研修は10年目に入り、既に社員の3割が受講済み。講師役をインストラクターリーダーが担い、愛用するオートデスクのCIMツールの機能強化にも、実践で得たノウハウを入れ込む形で自前の操作テキストを作成している。成果は300ページにも及ぶ。森氏は「モデリング作業も外注なしで対応できている」と胸を張る。実案件の担当者が悩みを相談できるように、本社に1週間留学する『CIM塾』も展開中だ。
 東北地方整備局初の発注者指定型活用業務となった横堀トンネル詳細設計業務では、施工計画のモデル化だけでなく、維持管理の点検結果をトンネルスパンごとに集約できる仕掛けも盛り込んだ。総合技術本部トンネルグループの宮城大助プロジェクトマネージャーは「維持管理では施工時の情報を活用できる仕組みが重要だ」と力を込める。
 社内公募でメンバーを集め、総勢20人が参加するICTチームでは「新たなビジネスの可能性も探っている」とチームリーダーを務める森氏が明かすように、CIMのデータをどう有効利用するかが研究テーマの軸だ。施工機械のアーム角度、吊り出し幅などを自動判定することで、危険時にアラームを鳴らすシステムも研究中。こうした試みは施工者との連携が求められるECI(施工予定者技術協議)方式にも発展できる。
 さらにVR(仮想現実)による現場把握の試みにチャレンジする。360度デジタルカメラで撮影したデータとCIMモデルを組み合わせ「実際の構造物を知る手段として地元説明や現場での合意にも活用できる」と永峰義寛環境・防災系部門測量・補償グループサブリーダーは考えている。
 このように同社はCIMを軸にICT活用につなげる流れを重要視する。上田隆取締役総合技術本部本部長は「いずれCIM推進室は廃止し、 新たな組織に移行することは必然の流れ」と言い切る。社内ツールとしてCIMが浸透し、各部門主導で取り組むようになれば推進組織は必要なくなる。方針として打ち出す「作るから使う」にも、そうした思いが込められている。
 拡大傾向にあるECI方式の導入では、設計者と施工者の密な情報共有が問われる。施工のデータを蓄積し、それを維持管理に活用する流れも同様だ。森氏は「そうなればデータを利活用する際の手段としてICT活用が重要な切り口になる。CIM組織のあり方も、ICT活用を軸に発展することになるだろう」と先を見据える。

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