【水資源機構筑後川局】- ダム事業 - 局長が語るその意義 地域づくりそのもの ダム・湖と共存へ | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【水資源機構筑後川局】- ダム事業 - 局長が語るその意義 地域づくりそのもの ダム・湖と共存へ

 地球温暖化の影響とも言われる異常気象による豪雨災害が多発している。中でも福岡県朝倉市、東峰村は、2017年九州北部豪雨、18年西日本豪雨と2年連続で大雨に見舞われた。一方で、雨が降らなければ渇水被害の恐れもあり、治水や水資源開発などの面で有効なダムの役割が再認識されている。今後のダム事業について、九州北部豪雨で下流域の被害軽減に貢献した寺内ダムの管理などを担う水資源機構筑後川局の元永秀局長に聞いた。

寺内ダム上流側の流木流入状況(2017年7月7日撮影)

--ダム事業の進め方のポイントは
 「最も重要なのは、『ダム事業は地域づくりそのもの』ということを大切にすることだと思います。そのために水源地域の『水のふるさと』を元気な地域にすることができてはじめてダム事業を進めることができると考えます。水のふるさとの地域づくりが最優先課題です」
 「水資源機構筑後川局が朝倉市・東峰村で建設している小石原川ダムが完成すると3つの湖(江川ダム、寺内ダム、小石原川ダム)が誕生します。大規模なダムによって誕生する湖が1つの自治体に3つもあるのは全国有数となります。この3つの湖を活用して地域の一層の活性化を図るため、朝倉市長、東峰村長、水資源機構筑後川局長とで『三つの湖を活用した復興戦略会議』を設置し、具体的な活動を進めています」

3つの湖による復興戦略会議

 「朝倉市、東峰村の水源地は過疎化、高齢化が進んでいた上に、2年連続の豪雨災害で大きな影響を受けました。安全・安心が脅かされています。朝倉市・東峰村は、流域外の福岡都市圏、嘉瀬川流域、矢部川流域などへ水の恵みをもたらし、3つのダムと共存する『水のふるさと』です。水資源機構筑後川局は、この『水のふるさと』を元気にすることに全力で取り組んでいます」

--ダム事業の今後の展開は
 「まず、ダムの役割を学んでいただくことが重要です。防災教育のように、ダムに関する教育・研修の機会を増やすことが大切です。ダムマニアの皆さんにも喜んでいただけるようなダムのプロを対象にしたコースも必要です。そのため、ダム管理者には、ダムについてのアカウンタビリティーを向上させる取り組みが不可欠になります」

小石原川ダムキラキラナイト☆バスツアー(小石原ダムの夜間建設現場を巡るナイトツアーを実施)

 「先日、『防災・減災フォーラムin朝倉』を開催しました。異常洪水時防災操作に特化した内容でしたが、非常に関心が高く、200人の目標を大きく超え360人の方に参加していただきました。好評だったのはダムの模型を使ったダム操作の説明でした。このような教材の重要さを認識しました」
 「次に、地域・メディアとの協働によるダムが提供しているサービスの見える化が求められると思います。日々の水資源の恩恵の理解や異常豪雨の際の危機意識の醸成などです。これらのことを理解し、共通認識を持っていただいた上で、地球温暖化社会でのダムの機能を再度評価することが求められるのではないでしょうか」
 「ダムの機能評価の結果、激化する気象に対応するため、ダムの再生が必要となる場合も想定されます。そこで、ダム再生について手法の検討や技術開発を進めることが重要になります。ダムの運用方法の見直し、ダムのかさ上げや放流設備の改善、貯水池の掘削、堆砂対策などに対応できるように準備することが必要です」

--ダムへの思いを聞かせて下さい
 「ダムは地域づくりです。水のふるさとを元気な地域にした上で、学び、再認識するとともに、地域・メディアとの協働、提供サービスの見える化を行い、ダム機能の評価とダム再生に取り組む時代になったと思います。これら全体をパッケージ化し、『ダム・湖とともに共存する地域経営戦略』を立案することが重要ではないでしょうか。大規模な3つのダムと共存する朝倉、2年連続の豪雨災害を受けた朝倉、筑後川流域外の福岡都市圏などに水の恵みをもたらしている水のふるさとである朝倉、だからこそ、『ダム・湖とともに共存する朝倉モデル』として全国に発信しなければならないと考えています」

水資源機構筑後川局長 元永秀氏

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