【復興の終わりの始め方】JIA宮城ら5団体が「復興シンポジウム みやぎボイス2019」を開催 | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【復興の終わりの始め方】JIA宮城ら5団体が「復興シンポジウム みやぎボイス2019」を開催

 日本建築家協会東北支部宮城地域会(JIA宮城、辻一弥会長)など5団体でつくる、みやぎボイス連絡協議会(渡邉宏代表)は6日、仙台市内のせんだいメディアテークで東日本大震災復興シンポジウム「みやぎボイス2019『復興の終わりの始め方』」を開いた。さまざまな立場で宮城県の復興にかかわる専門家らがそれぞれのこの8年間を検証・共有し、復興の終わりの始め方を議論した。
 「復興の終わりとは?復興を支える側(ハード整備)の視点から」をテーマにしたテーブルでは、塩崎賢明神戸大名誉教授が「復興とは生活の再建が最終目標だ。復興の進捗状況にも地域・個人で差があり、終わりはない」と指摘した。
 建築研究所の米野史健氏はハードの視点から「インフラ整備の完了が復興の終わり」と捉え、井上博夫岩手大名誉教授は「岩手、宮城両県はまちの器となる基盤整備が完了し、今後は経済活動が重要だ」と強調した。
 一方、河村和徳東北大大学院准教授は政治の観点から「15年度以降は選挙公約に“復興”が掲げられることが少なくなり、被災者と非被災者の意識比率が逆転した」と分析。その上で「被災者の中には“被災者”という“権利”がなくなることに恐怖を感じている方もいる。復興の終わりを宣言するリスクも考える必要がある」と持論を展開した。
 菊池雅彦復興庁参事官は「(被災地の)ニーズは絶えず変化している。2020年度で“終わり”と切るのではなく、連続的な展開の区切りとすべきだ」と断定的な終了の宣言の必要性を否定した。
 これに対し、野崎隆一神戸まちづくり研究所理事長は「阪神・淡路大震災では10年目で公的支援が大幅に見直された。東日本大震災でも行政は継続すべき事業のスイッチを切り替える必要がある」と強調。
 星英徳七ヶ浜町建設課管理係長は、道路の維持管理費用が震災前に比べて倍以上に増えたことを紹介しつつ「復興の“終わり”はまちの“新たな始まり”だと実感している」と増えたインフラの維持管理を新たな課題に挙げた。
 ドーコン東北支店東北復興推進室の今野亨氏は「北海道の産炭地域振興は、“終わり”を宣言しなくても自然に言葉を聞かなくなった。終わりというのは政策的、人口減による収束からなるもので、徐々に芽が東北で出始めている」と話した。
 増田聡東北大大学院教授は「被災地で得た知見や技術を地域に持ち帰り次の取り組みに生かされている。復興が何かの社会的イノベーションの種になっている」と復興を契機とした発展に期待を寄せた。

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