【市民と考えるまちづくり】JIA宮城が「アーキテクツウィーク2018」を開催 | 建設通信新聞Digital

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【市民と考えるまちづくり】JIA宮城が「アーキテクツウィーク2018」を開催

 日本建築家協会東北支部宮城地域会(JIA宮城、辻一弥会長)主催のアーキテクツウィーク2018が11月27日から30日までの4日間、仙台市内のせんだいメディアテークで開かれた。建築関係団体や教育機関、企業などと協働し、まちづくりや法制度などについて、市民とともに考え、建築を身近に感じさせる多彩なイベントが展開された。
 初日には「これからの建築とまちづくりPART4」と題し、良好な建物・街並みの文化形成の促進に向けて必要な仕組みや法制度について、講演とパネルディスカッションが行われた。
 講演では、建築基本法制定準備会の会長を務める神田順東大名誉教授と、松本昭市民未来まちづくりテラス社長が、建築基本法の必要性や制定に向けた課題などを解説した。
 続くパネルディスカッションでは、建築・まちづくり基本法を考える会の松本純一郎会長をコーディネーター、同会の中居浩二副会長、神田教授、松本社長ら6人をパネリストに迎え、建築・まちづくり基本法の必要性や将来のまちづくりに必要な取り組みなどを討論した。
 このうち、松本社長は「高齢化や人口減少に伴い、建てるだけではなく既存のものを活用することが課題になりつつある。そうした社会の変化に対応した建築の新しい方向性を示すという意味がある」と同法制定の意義を語った。
 将来のまちづくりに関して中居副会長は「質の高い建築とまちをつくるためには、人材の育成と同時に市民に高い関心を持ってもらう取り組みが不可欠だ」と指摘。同日に行われた、立町小学校の児童らによる西公園広場のリニューアルデザイン発表を例に出しつつ、「子どものころから空間に対する理解や考え方を養う施策はとても有効だ」と述べた。
 28日には、『ROKI Global Innovation Center-ROGIC-』で17年日本建築学会賞(作品)と16年度JIA日本建築大賞を受賞した建築家・小堀哲夫氏(小堀哲夫建築設計事務所代表取締役)による記念講演会が開かれた。

講演する小堀氏

 「建築と環境と人間」と題した講演の中で小堀氏は、子ども時代を過ごした岐阜県にある実家からの景色について「窓からは田んぼと大工だった父が手掛けた寺しか見えなかった。田舎だったが、いま思えば現代にはあまりない1人だけになれる環境があった」と“環境”に注目する自らの設計の原点を振り返った。
 さらに、学生時代に訪れたフランスの教会で会堂内に響く美しい音色を聞き、建築にはデザインなどの視覚情報以外の「音」も重要になることを実感した経験を紹介するなど、“環境をデザインする”という思いにつながったエピソードを紹介した。
 29日には、杉本洋文東海大特任教授による「地域材を活用した公共施設の木質化!」と題した講演があった。
 杉本教授は、木材の伐採・製材・流通などの各工程について「製材や流通施設が集約されていないため、伐採した木材を工程ごとに移動させる必要があり、トータルで値段が高くなっている」と指摘。建設コストを低減するため、輸送の手間が少ない地場の木材の活用を訴えた。
 さらにCLT(直交集成板)など、公共建築における木材の活用事例を紹介しつつ、さらなる利用拡大に向けて「木材を種類や形状に応じて使い分けるなど、軽量で強度があるという木材の利点を生かした構造システムの設計が求められている」と語った。
 最終日の30日は、JIA東北支部と日本建築学会東北支部建築デザイン教育部会(櫻井一弥部会長)が、建築学生テクニカルセミナー18を開き、第22回JIA東北建築学生賞で入選した2作品を対象に、同支部協力会の会員企業が、作品を実現するために必要な技術・材料の情報を提供したほか、設計上で留意すべき視点を指摘するなど、建築とまちづくりについて縦横に話し合う密度の濃い4日間となった。

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