【近鉄博多ビル】都心の新たなランドマーク 繁華街での工事を安全に行う工夫とは? | 建設通信新聞Digital

5月2日 木曜日

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【近鉄博多ビル】都心の新たなランドマーク 繁華街での工事を安全に行う工夫とは?

 JR博多駅筑紫口の正面に全面ガラス貼りの外装と壁面緑化、最上階から滝が流れるデザインが特徴的な建物が姿を現した。近鉄不動産が博多都ホテル跡地に建設した近鉄博多ビルだ。駅を挟んで博多口正面に建つ西日本シティ銀行本店とともに、博多駅地区の新たなランドマークとして注目を集めている。「緑と水と光のビル」を外観コンセプトに、都ホテル博多と低層部の商業施設で構成される。ホテルは福岡市のハイクオリティホテル建設促進制度の第1号案件として、ゆとり、クオリティー、デザインのすべてを満たした宿泊施設となる。施工を担当した大林組・大日本土木JVの藤元伸次所長は、「九州の玄関口であり、交通量や人の往来が多いため、第3者災害の防止に細心の注意を払った」と話す。

壁面緑化

 本体工事には大林組が旧博多都ホテルを解体した後、着手した。基礎工事では、既存の耐圧盤と地下外壁を残し工期縮減を図った。既存躯体は補強により山留め壁に利用している。建設地は地下水位が高く、隣接して福岡市営地下鉄も通っているため、「浮き上がり防止や地下鉄函体への影響を考慮し、アースアンカー40本で建物を支持地盤に緊結したほか、ディープウェル8本を耐圧盤の下に設置して地下水をくみ上げた」と話す。解体、本体工事期間中には、浮き上がりや地下鉄函体の傾斜を24時間自動計測した。「結果はいずれも3mm程度に抑えることができた」と対策の効果を説明する。

現在の様子

 第3者災害の防止では、「飛来落下を防止するため、滝が流れ落ちる北西側の一部を除いて外周に足場を組まないように工夫した」。外装のアルミカーテンウォールは工場でLED照明を内蔵したルーバーとユニット化した。また、当初予定していたアスロックをPC板に変更し、施工性の改善を図った。これらをトラックで現場に搬入し、タワークレーンで吊り上げて設置した。これらの施工計画は、工期短縮にも貢献している。
 建設に当たっては福岡市の都心部機能更新誘導方策を活用した。1階と地下鉄接続部に公開空地を設ける総合設計制度及びハイクオリティホテル建設促進制度を適用し、容積率は法定600%から875%に緩和された。ホテルは客室数208室を設ける。面積は全室30㎡超で、33室は36-95㎡となる。
 外観は、壁面緑化や屋上庭園に加え、最上階から水が流れ落ちる滝を設けた。夜間も外装ルーバーや滝用の照明でライトアップされ、「緑と水と光のビル」を具現化している。最上階にはレストランや日帰り入浴も可能な温泉を利用した屋外温泉スパ・屋内浴場などを設け、上質でゆったりとくつろげる宿泊施設となる。低層階には都市型ホテルと調和する高級飲食店などの商業施設を配置する。地下階は地下鉄コンコースと接続して歩行者の回遊性を高め、地下駐輪場を整備することで駅利用者の利便性も向上させる。

最上階には温泉スパやレストランを設けている

 これまでに本体工事を引き渡し、現在は地下鉄コンコースと地下2階で接続する工事、機械式の駐輪システムの導入工事を進めている。福岡市から工事を受注して、大林組が単独で施工している。8月末の引き渡しを予定しており、藤元所長は「引き続き無事故・無災害を念頭に作業を進めたい」と気を引き締める。

藤元所長

【工事概要】
▽工事名称=(仮称)近鉄博多ビル新築工事
▽建設地=福岡市博多区博多駅東2-1-1
▽規模=SRC・S造地下3階 地上13階建て塔屋2層延べ2万3008.10㎡
▽用途=商業施設(地下1階-地上2階)、ホテル(地上3階-13階)
▽発注者=近鉄不動産
▽設計・監理=三菱地所設計
▽施工=大林組・大日本土木JV
▽工期=2017年7月28日-19年8月30日

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