【記者座談会】建コン協インフラ研がコロナ後の社会で提言/衛星防災情報サービスへ業務提携 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【記者座談会】建コン協インフラ研がコロナ後の社会で提言/衛星防災情報サービスへ業務提携

A コロナ後の社会やインフラのあり方について、建設コンサルタンツ協会インフラストラクチャー研究所が提言をまとめたが、背景や狙いは。
B コロナ禍によって現代社会が抱えるさまざまな問題や課題が顕在化した。それは「自分さえよければ」「コスパさえよければ」「今だけよければ」という自分第一主義や行きすぎた利益・効率追求、短期的な成果主義がもたらす弊害が明らかになったとも言える。一方で社会インフラに関わる技術者が長期的な視点や社会全体の視点から説明責任を十分に果たしていたかという反省も踏まえて、「社会がどう変わるか」を予測するのではなく、より良い方向に変えていくために、いま何ができるかを主体的に考え、行動していくべきだという思いが出発点としてあるようだ。
C 特に重要視しているのが価値観の転換だ。今回のコロナ禍は激甚化する自然災害だけでなく、感染症によるパンデミックも社会に重大な影響を及ぼす外力であり、これに対する一定の安全性を確保する、あるいは被害を軽減するためには経済効率一辺倒から脱却し、社会全体が「余裕(ゆとり)」を内包すべきだと提言している。
B 長期的な視点から社会を考え、それを支える社会インフラが常に必要な機能を発揮できるよう、それに必要な財源や制度、仕組みなどについて工夫すべきだと言明しているのも重要な指摘だ。
C コロナ後の「新しい社会」が分散や余裕を前提とすれば高コスト社会になるという側面も伴う。これに対して社会インフラに関わる技術者は既成概念にとらわれずに、自信と誇りを持って行動することによって説明責任を果たしていくべきだとも鼓舞している。今回は中間報告として公表したが、建設コンサルタントの範疇にとどまらず、広く世に問い議論を喚起することで1人でも多くの共感が得られる考え方が形成される一助にしたいという思いがあるようだ。

15日のオンライン記者発表会に出席した(右から)有元龍一日本工営社長、藤沢秀幸ゼンリン取締役常務執行役員事業統括本部長、米倉英一スカパーJSAT社長。2021年4月からのサービス提供を目指す

◆維持管理レベル高度化と省コスト実現

A 社会がどう変容しようとも「安全安心な社会」が根幹にあることは揺るがない。その意味でも建設コンサルタント各社で防災・減災ソリューションの開発・提供が一段と活発化している。
D 日本工営とスカパーJSAT、ゼンリンという、建設コンサル、衛星事業、地図事業それぞれの最大手3社が国内初の「衛星防災情報サービス」の開発・提供に向けて業務提携することを15日に発表した。背景には頻発・激甚化する自然災害への対応とともに、少子高齢化や膨大なインフラ施設の老朽化進行による維持更新・点検の費用や人的負担の増大がある。維持管理レベルを維持・高度化しながら、省コスト・省力化できる新技術へのニーズが今後飛躍的に高まることを見越した動きとも言える。
E 日本工営とスカパーJSATは2019年11月から業務提携し、衛星解析技術とインフラ施設のリスク評価技術の事業連携を開始していた。今回ゼンリンが加わり、ミリ単位で地表変状を検出するインフラモニタリング技術と全国同時多発的な災害にも対応できる大量の衛星群の活用に、全国1741市区町村を網羅した詳細な住宅地図データや全国約3800万棟の建物ポイントデータなどが提供されることで個別建物レベルでの状況把握も可能になる。多様なユーザーニーズに応えた形でさまざまな分野でのリスクマネジメントに活用されそうだ。
A 社会課題と一口に言ってもさまざまな背景や要因が輻そうし利害対立も少なくない。その解決に向けては専門分野を超えて幅広く知見を集め、それを効果的に組み合わせることが必要になる。建設コンサル各社の異業種連携は今後さらに加速しそうだね。

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