【記者座談会】改正意匠法で初登録物件公表/建築物の環境性能重視 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【記者座談会】改正意匠法で初登録物件公表/建築物の環境性能重視

A 意匠法改正で解禁となった建築物と内装の意匠登録で、初登録物件が公表された。建設業になじみの薄い制度だからだろうが、「訴訟目的での意匠登録が増えるのでは」という声が編集局に寄せられた。
B 考えられる意匠を登録して類似の建築物が建った後に訴訟を起こすとすれば、まず登録した意匠を非公開にする必要がある。それは「秘密意匠」という制度があって、自動車の外装などを発表まで秘匿しておきたい場合などに活用されている。ただし、計画している建築物の意匠がすでに登録されたものかどうかを特許庁に確認した際は、秘密意匠も含めて有無を特許庁が伝えることになっている。
A では訴訟目的の意匠登録も可能なのか。
B 特許庁によると、物品の意匠登録制度は100年以上続く長い歴史があるが、「物品で、商標登録で起きているような(訴訟目的で登録する)事例は見られない」としている。文字の場合、考えられる選択肢に限りがあるものの、物の意匠は無限に想像できる。一般的に思い付く形を手当たり次第に登録しようとしても、登録審査で拒否されて登録できない。まったく新しい意匠の建築物の図面だけを登録することも可能だが、それと同じ形を他の人が思い付くケースがどれだけあるだろうか。数多く登録すると手間もコストも掛かるので、訴訟目的での登録には向かないのかも知れない。
C いずれにしても意匠法は、建築を制限するための“規制法”ではなく、意匠によってブランド価値を構築する『デザイン経営』を促す“振興法”に近い法律だ。設計者には、制度を活用して「この建物の形なら、あの企業」というブランドイメージの構築を事業者に促すような意匠を発想して提案してもらいたい。

三井不動産が日本橋に建設する国内最大・最高層の木造オフィスビルの完成イメージ

◆官民双方で進む木造化プロジェクト

A 話は変わるけど、政府がCO2などの排出量を「2050年に実質ゼロ」とする目標を掲げたことで、建築物の環境性能を重視する動きがますます加速しそうだ。
D 民間だけでなく、地方自治体の間でもZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を検討する動きが広がってきた。ただ、公共施設の場合はコスト面から完全なZEBの実現は難しく、ZEBの水準に近い「Neary ZEB」、ZEBを見据えた「ZEB Ready」を目指す動きが大半を占める。
E 最近目立ってきたのが木造だ。三井不動産は、東京・日本橋に国内最大・最高層の木造オフィスビルを建設する。17階建て延べ約2万6000㎡、高さ70m。同規模のS造ビルと比べ、建築時のCO2排出量を約20%削減できると見込む。三菱地所も札幌市で11階建て延べ約6000㎡のハイブリッド木造ホテルを建設している。
A 公共施設で木造化の動きはどうかな。
D 庁舎や学校、文化施設などで木造を採用する自治体が相次いでいる。民間と同様、SやRCとのハイブリッド構造も多い。例えば、茨城県大子町は延べ約4000㎡の新庁舎を木造とする計画だ。県産材を使用するなど、地域産業の振興にも貢献できる。学校施設の木造化では、環境教育の“生きた教材”として活用を目指す動きも多い。
E 木造化を検討する自治体にとっては、他の自治体の先行事例が参考になる。このため国土交通省は木材利用の事例集を作成するなど、自治体の取り組みを後押ししている。
D 木造化のプロジェクトが相次いでいるのには、直交集成板やさまざまな耐火集成材の台頭が背景にありそうだ。コストがネックとなるケースもあるものの、今後さらに部材や技術の普及が進めば、コストも低減していくだろう。

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