東京地下鉄は、前回の東京オリンピックが開催された1964年の日比谷線開業以来“初の新駅”として「虎ノ門ヒルズ駅」の建設を進めている。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会前の7月に開業する予定だ。重層施工などこれまでの技術を結集させた工事も8割方進み(8月末時点)、真新しいホームも姿を現した。事業主体である都市再生機構(UR)のもと、設計・施工監理を担う東京地下鉄と施工する鹿島・大林組JVが足並みをそろえ三位一体で挑む。
新駅は、生活環境を備えた国際的なビジネス・交流拠点の整備など、周辺まちづくりとの連携を重視し、交通結節機能を強化する。URが事業主体となって、霞が関駅~神谷町駅間で、銀座線虎ノ門駅につながる地下歩行者通路やバスターミナルを整備する計画で、全体完成は22年度を予定している。現場を案内してくれた東京地下鉄改良建設部第四工事事務所の小松豪氏は「何が何でもオリンピック・パラリンピックに間に合わせたいという強い思いがメトロにはある。多様で新しい技術を結集させた工事だ」と力を込める。
◆営業線近接の施工
作業空間から壁1枚を隔てた先では、日比谷線が営業運転している。このため、日比谷線の躯体を下から支えるアンダーピニング工法を採用した。既設構造物に影響を与えず、営業運転中の線路躯体を受け替えながら構造物を構築する。ここでは、土砂の強度を高めるために薬剤を注入した後、先行して小さなトンネルを掘りトレンチ掘削を進めた。トンネルとトンネルの間を15m以上開けることで構造物への影響を減らし、既設構造物との間には油圧ジャッキを取り付け、加重を均等にかけることで沈下を抑制している。
◆都市の発展に勢い
地中連続壁を構築した上で施工を進めたが、地下には水道管など複数の埋設物がある。それぞれの位置台帳を入手した上で損傷しないように人力で慎重に掘り進めた。事前に位置を確認した埋設物は、吊り防護を採用し、鋼材で下から支え、上からワイヤーで吊り上げて保護している。
地盤の変動対策では、日比谷線の躯体の傾きを、白いピアノ線を使って浮き沈みの有無などを監視している。現場内では、事故防止に向けて災害発生事例を絵や図などで掲示し、安全管理の徹底や注意を呼び掛けている。
相対式ホーム2面の地下1階にホームや暫定的な改札を設け、最終的には地下2階に改札を移設する。深さ約15m、幅20mで掘削数量は約3万5600m3、既存構築物撤去が約490m3、コンクリート使用量が約8600m3となる。
藤野覚東京地下鉄改良建設部第四建築工事所技術課長は「営業列車の安全確保を第一に進めている。街づくりと一体化した駅として、周辺のバスターミナルや虎ノ門駅と接続するため街の発展と一緒に盛り上げたい」と述べた。