【記者座談会】新型コロナの影響続く | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【記者座談会】新型コロナの影響続く

A 日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大がゆるやかに収束に向かいつつあり、東京都内でも独自に警戒を呼びかける「東京アラート」が解除されるなど、経済の本格的な再始動に向けた期待が高まっている。
B 今月6日には、東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」(東京都港区)が開業を迎えた。霞ケ関駅~神谷町駅間に位置し、1964年の日比谷線開業以来、初の新駅となる。駅周辺のまちづくりとの連携を重視し、銀座線虎ノ門駅につながる地下歩行者通路を整備して、バスターミナルや周辺再開発ビルにも接続する。
C 経済の再始動に向けた明るい話題も出てきた。とはいえ第2波、第3波の懸念もあり、依然として楽観が許されないのが新型コロナウイルスだ。建設業界では、主要顧客による民間設備投資などの軌道修正を予測する声が多くみられ、2021年3月期の工事受注見通しをマイナスで見積もった社も多い。「合理的な算定が困難」として通期予想の開示を見送った社や新型コロナの影響を織り込まない形で公表したケースもある。

6日に東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」が開業。経済の本格的な再始動に向けた期待が高まっている

◆財源確保で大型事業一時停止も

A 民需の落ち込みに加え、公共工事への影響を懸念する声も次第に大きくなってきた。不況時には民需落ち込みの下支え効果として、公共工事への期待が高まるのがこれまでの構図だった。今後、公共工事にも「新たな日常」の波が押し寄せてくるのだろうか。
D 対面によるプレゼンテーションを伴うプロポーザルや総合評価落札方式の入札などは、感染拡大防止のため一定期間の延期を決めた案件が数多い。数カ月程度の延期が一般的とはいえ、受注を見込んでいた企業には一定の影響が出る。一方、庁舎など公共施設の計画段階では、市民参加を得てワークショップ形式で検討会合を開くケースが増えている。ワークショップなどは、いわゆる「3密環境」になってしまうことから、検討スケジュールを先送りする動きが増えてきた。1年程度の先送りが多い。結果として工事発注も年度単位で先送りとなる。
C 感染拡大防止に向けた先送りだけではない。「コロナ対策の財源確保」を狙いとして大型公共工事を一時停止する動きまで出てきている。独自の対策に力を入れる地方自治体は多く、コロナ対策の優先順位は圧倒的に高い。まとまった規模の財源捻出となると、大型公共事業に視線が集まるようだ。
B 熊本市は5月、市役所本庁舎の建て替えや市電の延伸などの大型事業を一時中断する方針を固めた。財源を新型コロナ対策に充てるのが狙いだ。新庁舎基本計画策定支援業務の公募型プロポーザルも途中で中止した。6月に入ってから静岡市も、庁舎の移転新築、海洋文化施設など3つの大型建設事業を停止すると表明した。計400億円規模の予算は、コロナ対策や社会経済活動の活性化などに再配分する。
D 15日に記者会見した東京都中小建設業協会の細沼順人副会長は「都の発注案件の一部が中断しているほか、コロナ対策に(都の)公共予算が振り当てられており、発注件数がかなり減少している」と窮状を訴えた。山口巖会長は「公共事業は経済の下支えに寄与する。また、会員企業は地域の守り手である。そうした観点から公共投資予算の確保を引き続き都に要望していきたい」との考えを示した。
A 新型コロナの影響によって、実際に工事発注がどの程度減少したのか、今後、検証を進めていく必要がある。工事規模や施設用途などによっても状況は異なってくるかもしれない。

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