【記者座談会】台風19号 東北、関東甲信の決壊現場 | 建設通信新聞Digital

4月16日 火曜日

公式ブログ

【記者座談会】台風19号 東北、関東甲信の決壊現場

A 台風19号が東北、関東、東海の広い範囲に被害をもたらした。まずは久慈川・那珂川の状況はどうだったか。
B 茨城県内の久慈川と那珂川の決壊現場6カ所中5カ所を見たが、決壊した堤防のすぐ近くに住宅や店舗・業務施設などがある常陸大宮市富岡の久慈川左岸と同市野口の那珂川左岸の周辺は建物の窓の1.5mほどの高さに水が到達した泥の線が残っていた。富岡の久慈川左岸は発表上、1カ所の決壊という扱いだが実はここだけで4カ所決壊していた。
A 復旧作業の状況は。
B 決壊現場は夜間も投光機で照らしながら24時間態勢で応急復旧工事が進められ、土を運ぶトラックがひっきりなしに往来していた。地元地権者の協力でヤードを確保できた現場は大きな建機で作業できていたが、そうでない所は小型の建機で作業せざるを得ず大変そうだった。
A 千曲川はどういう状況か。
C 最も被害の大きい長野市穂保地区は、水を多く含んだ泥がくるぶしあたりまで堆積し、歩くのも困難な場所が多い。それでも避難していた住民は、何とか歩けるようになった場所を選んで家に帰り、清掃を始めていた。ただ、雨が降って、なかなか思うように進まないようだった。決壊現場は、堤防がごっそり切り取られたようになっており、かろうじて残っている周囲の家屋は1階部分が強い力で壁や窓をはぎ取られたような状態で、4年前の茨城・鬼怒川の決壊現場を思い出した。

長野市穂保地区で幹線道路沿いの店舗で泥かきをする地元建設会社(14日撮影)

応急復旧工事が進む常陸大宮市富岡の久慈川決壊現場(15日撮影)

被害抑えた河川管理者にも目を向けて

A 地元建設会社はもう活動していたか。
C まだ捜索・救助活動が続いているため、泥の撤去などが本格的に始まっている状況ではなかったが、幹線道路沿いの店舗の事業主が個別に地元建設会社に泥かきを依頼しているようで、あちこちで小型バックホウが稼働していた。決壊した堤防の粗締切は、災害協定を結んでいた建設会社とみられる地元の会社が、決壊時から昼夜を問わず作業している。
A 宮城県大郷町の吉田川は。
D もともと地元で「暴れん坊」と呼ばれるくらいはんらんの多い川として知られていた。前回越流したのは隣の大和町で支川との合流部分だったが、今回は大きく蛇行した先の破堤で、1986年、2015年に浸水被害を受けており、今回で3回目だ。
A 対応はしていたのか。
D 事前に大型のフレコンバッグを積んでいたものの、長さ約100mにわたって基礎の一部を残して破堤、近隣の農家や田畑、寺などに土砂が流れ込んだ。破堤部分を取材する記者団を見つけた被災者が、丈夫な堤防の整備や河川改修の必要性を懸命に訴える一方、堤防の下では黙々と片付けをする農家の姿があった。帰り道には稲を刈り終えた後の田んぼから流出した大量のワラが道路一面に広がり、地元建設企業が小型のバックホウで道路の泥かきをする横で、住民が水没して使えなくなった家電や家具の片付けに追われていた。
A 東京都内はどうか。
F 多摩川がはんらんするなど、浸水個所が多数見られた。ただ、国土交通省や自治体などの河川管理者が、水門の操作やダムの放流調整、地下調整池の開放などあらゆる治水施設を駆使して、被害を最小限に抑えたのではないか。知り合いの世田谷区民も「いろんな手を尽くしてよく頑張ってくれた」と驚いていた。まずは被災者を思い、生活再建が第一だけど、治水施設とその運用に尽力した人々にも目を向けたいね。

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら