【RICOH】「EDWプラットフォーム」建設業向けサービス始動 | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【RICOH】「EDWプラットフォーム」建設業向けサービス始動

 リコージャパンは、ICTの活用により、中堅・中小企業の生産性革新を支援する『EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES(EDW)プラットフォーム』を始動した。建設業界でも、建設現場や作業所で複合機やカメラなどエッジデバイスから取得する情報をデジタルデータに変換し、EDWパートナー企業が提供するソフトウェアで利用できるようにすることで、業務の自動化、省力化を実現する。坂主智弘リコージャパン社長、EDWパートナー企業の長尾良幸コンピュータシステム研究所社長、重森渉建設システム社長がてい談し、EDWプラットフォームを活用した建設現場の未来のあり方について語り合った。

--これまでの建設業界のICT活用の動きと各社の取り組みを教えてください

 重森 建設業の電子化はCALS/EC(公共事業支援統合情報システム)から始まり、i-Constructionでさらに拍車がかかりました。それまで先進的で予算のある一部の企業だけが現場のICT化を進めることができましたが、i-Constructionが始まってからはあらゆる企業がICTにより生産性向上を図る時代になっています。
 ただ、働き方改革の実現はこれからです。地方では働き手が不足し、仕事を受注できないケースが出るほど深刻化しています。働き方改革にはICT化が必要不可欠であり、例えば2人で行う作業が1人になれば省人化や時間短縮につながります。働き方改革とは、それらの積み重ねで実現されるものだと考えます。
 当社は、創業当時『時とゆとりを提供する』というスローガンを掲げていました。これは現在でいう働き方改革です。その使命達成に向けて28年培ってきた施工管理の経験とノウハウが大きな強みです。その強みをソリューションに余す事なく反映し、働き方改革につながる仕組みを提供し続けていくことが今まで以上に必要だと考えます。
 長尾 当社は創業から45年間、「建設業界に役立ちたい」という気持ちでシステムを開発してきました。創業当時の建設業界は、業務や経営を学べる教科書というべきものがなく、「経験と勘と度胸の世界」と言われるほど職人気質でした。特に積算や施工は経験者が培ってきた属人的な技術に支えられ、会社に資産として形成されていない状態でした。その部分を見える化し、教科書というべき手引きにするべく、「積算」を中心に製品開発してきました。
 現在の建設業界は、建設投資が増加に転じたものの人材不足が深刻化しています。来年度以降も工事量の増加が予測され、インフラメンテナンスの需要も増えています。橋梁は50年以上経過したものが約13万7000橋あると言われ、打音で疲弊状況を判断する従来のやり方で対処するのは困難です。そのためICT施工による測量や重機の自動化が進められています。
 このような状況だからこそ経験者が培った智恵や技術の伝承がますます重要です。当社もすべての自治体ごとに資機材単価や予算編成の傾向など自前で蓄積したノウハウがあり、若手にいかに伝えるかが業務の重要なポイントになっています。
 坂主 われわれは全国の営業所に営業担当者とフィールドエンジニアを配置し、ビジネス展開しています。顧客の多くは中堅、中小企業であり、とりわけ建設業界には青焼き複写機の時代からお世話になっています。CALS/ECの時代にはコンピューターの普及に合わせて中小、中堅建設会社の業務改革をお手伝いさせていただき、コンピュータシステム研究所と建設システムとの連携も始まりました。最近はホームページの作成支援などで建設業の困りごとの解決にパートナー企業と取り組んでいます。

--人手不足が深刻な建設業界でどのような“革新”が必要と考えますか

 坂主 全国には100万事業所を超えるお客さまがいて、その多くで当社の複合機を利用いただいています。長い歴史の中で顧客に選んでいただいた製品ですが、その役割を“再価値化”する取り組みを進めています。最新の複合機はスマートフォンのように便利なアプリをダウンロードして使う「ICTデバイス」になりました。それぞれのユーザーがやりたいことにあわせて現場でアプリを使いこなし、“デジタルワークプレイス”を構築できます。
 例えば現場の書類を紙の台帳で管理すると、付帯書類の作成などで同じ情報を使う時、わざわざ打ち直さなければなりません。複合機で書類を読み込みデジタルデータに変換すれば作成できます。こうしたデジタルワークプレイスの障壁となるフロントエンドの業務を大幅に削減するのがEDWプラットフォームの役割です。さらにオープンプラットフォームでさまざまなアプリを動かせるため、複合機を起点に現場の働く環境を変えていきます。
 EDWプラットフォームは、現場で使うタブレット端末とも連携します。施工管理に関わる情報共有・コミュニケーションを大幅に効率化する『施工管理コミュニケーション変革パック』を建設業向けに9月にリリースしました。
 重森 当社は約3万5000社のユーザーがおり、各社が複数の社員で利用すると考えると実質30万人を超えるユーザーがいます。その人たちにアンケート調査すると、製品を使っているのは40-50代が最も多く、まさに建設業の最前線で活躍している人たちでした。
 将来的に彼らがリタイアすると、培った経験や技術も同時に失われます。それを防ぐため、デジタルベースで現場の記録を残すことを考えています。台帳に記録する情報をすべてデータ化し、クラウドに上げておけば、問題が起きたとき、同じような工事で先輩の残した記録を参照して仕事の能率が上がります。5GとAIをかけ合わせることで技術的にも容易になりました。現在の40-50代が退職する前に技術や経験をクラウドに蓄積し、使える状態にしたいと思います。
 デジタルデータの活用法をさらに一歩進め、建設業の各社が使うツールの情報をみんなで共有し、全体として生産性を底上げする仕組みも構想しています。その実現に向け、ベンダー各社と協力していきたいと思っています。
 長尾 入札契約制度改革により、上流の受注プロセスでは予定価格算出ノウハウに加え、工事の安全確保と作業効率を最大限考慮した計画の策定が求められます。同時にコストを最小化する段取りが要求されます。それにはベテラン技術者が長い年月をかけて経験により培ってきた「現場の知恵」を上流段階で活かせる仕組みが欠かせません。既に大手ゼネコンでは始まっていますが、中小建設業で「知恵の見える化・活かす化」が実現されることこそ“革新”だと考えます。EDWにベンダー各社が培った経験知を集結し、中小建設業の革新が加速することを期待したいと思います。

--EDWプラットフォームは建設現場にどのようなメリットをもたらすでしょうか

 坂主 人は目的を達成するために必要なツールは手放しません。特に専門的な道具を使うことは“仕事の流儀”につながるため、カメラなどのエッジデバイスがなくなることはないと思います。ただエッジデバイスに記録したデータを使い、仕事を最大限に効率化できる環境とは言えないのが実情です。
 例えばICレコーダーに音声を記録しても、文書化する際に聞き直したり打ち出すのに時間がかかります。ICレコーダーに録音するだけではテキストとしてデータ処理できる状態になりません。つまり、記録した音声をデジタルデータに素早く変換することが大切なのです。それをEDWパートナー企業と連携し、実現していきます。
 重森 弊社は施工管理のソフトメーカーのため、施工管理に関するデータやノウハウを数多く所有しています。しかし、それでも不足している部分もあります。一番の課題は建設業界のデータがオープン化されていない点です。EDWプラットフォームに多くのベンダーが参加し、様々なデータが組み合わさることでわれわれのソリューションの幅もさらに広がっていくと思います。そして今まで以上に現場で働く人が喜ぶものが提供できるようになるのではないかと考えています。
 長尾 積算で扱うコストや数量の数値は施工でも使えるのですが、通常は別々に扱われます。弊社と建設システムはデータベースを共有するファイルを持ち、受注段階に必要な積算データを施工段階のユーザーが利用できる体制にしました。このシステムをEDWプラットフォームに乗せることで建設生産システムの上流から下流まで簡単にデータ連携して使うことができるようになります。さらに下流の現場情報を上流の受注段階で活用させるデータの循環・統合をEDWで実現することで「受注量の確保」と「現場利益の確保」の両面で大きなメリットを生むと考えます。
 坂主 そうしたデータ統合をぜひとも実現したいと考えています。オープンプラットフォームにしたのもそこが狙いです。1社では成し遂げられないこともベンダーの英知を集めることで達成できる仕組みを目指しています。
 それぞれのアプリやエッジデバイスで作成した成果物をEDWプラットフォームに提供してもらい、ほかのアプリでも使えるようにする。言い換えれば成果物をみんなで分け合う仕組みです。データ共有を実現することで中堅、中小建設業の働き方改革に貢献し、現場から早く帰れるようにします。それが希望、休暇、給料の『新3K』の実現につながると思います。

--EDWプラットフォームでどのような建設業の将来像を描きますか

 重森 こうしたデータ共有により、まず考えられるのが、監督が事務所に戻ると現場で記録したデータがそろっている状態になることです。日中は現場で作業し、特別にパソコンを操作しなくても工事写真などさまざまなデータが自動的に整理されれば、残業時間を大幅に減らすことができます。地方の建設業は週に1日休めるかどうかという環境で仕事しています。早急に働き方改革を行わなければ、地方は疲弊する一方です。さまざまなデータを最適な形で活用できれば顧客の仕事は確実に楽になるでしょう。
 長尾 発注時期の平準化は発注者責務となりました。しかし地方自治体には予算消化という逆向きのエンジンが働き、工事が集中してしまうのが実情です。デジタルデータを高度に活用することで生産性を向上させるEDWプラットフォームの仕組みが今後ますます重要になります。
 坂主 4月に大手企業を対象にした残業時間上限規制が始まりました。来年4月には中小企業も始まり、24年から開始する建設業界にとっても試金石になります。周辺産業の変化を見ることで建設業界の空気が変わるかもしれません。デジタルワークプレイスが建設業の仕事の魅力を高め、人材確保に貢献することもEDWプラットフォームの重要な役割の1つと考えます。

社長てい談

◆建設業の“はたらく”をよりスマートに/現場の自動化、省力化を推進/アナログ情報を素早くデジタル変換

 リコージャパンは、現場の知的創造と生産性革新を実現するため、ICTやIoT(モノのインターネット)に対応したビジネス基盤『EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES(EDW)プラットフォーム』を6月に公開した。そしてパートナー企業で構成する「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACESパートナー会」がエッジデバイスとパートナーエコシステムのコラボレーションを強化し、現場とオフィス業務の自動化、省力化を実現する。
 具体的には、オフィスと現場など物理的に離れて働く人が「互いにつながり、知的創造を支える空間」となるデジタルワークプレイスを提供する。ワークプレイスをデジタルの力で強化し、エンパワーすることで顧客の“はたらく”をよりスマートにするのが目標だ。
 特に多くの中小企業は紙文書をはじめ手書きメモ、音声記録、ビデオ映像、プリント写真などさまざまなアナログ情報を扱う業務が残り、ICTによる生産性革新の障壁となっている。EDWプラットフォームはさまざまなエッジデバイスを通して取得したアナログ情報を連携アプリケーションによってデジタルデータに変換し、エコシステムとつなぐことでデジタルワークプレイスを実現する。

◇EDWの提供する価値

(1)パートナーアプリケーションの付加価値向上
 アプリケーションを利用するにはデジタル情報の入力が必要であり、紙文書などのアナログ情報をデジタル情報に変換する。このフロントエンド処理を簡素化するため、アプリケーションの付加価値が向上し、活用が促進される。
(2)コンポーザブル・アプリケーション
 アナログ情報をデジタルに変換するさまざまなコンポーネントを利用できる。そのコンポーネントを組み合わせてワークフローを作成する開発ツールを提供するため、簡単かつ短時間でアプリケーションを開発できる。
(3)拡がるエッジデバイス
 EDWプラットフォームを介してオフィスと働く現場のさまざまなエッジデバイスにつながる。