【現場で働く人の誇りを活写】山崎エリナさんインフラメンテナンス写真展 10/28まで@新宿 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【現場で働く人の誇りを活写】山崎エリナさんインフラメンテナンス写真展 10/28まで@新宿

 道路や橋梁、トンネルなどの補修現場に密着し、そこで働く人びとのひたむきな姿を撮影し続けている写真家の山崎エリナさんの写真展「インフラメンテナンス~日本列島365日、安全と安心の守り人」が東京都新宿区のリコーイメージスクエア新宿で開催されており、連日多くの来場者でにぎわっている。19日のトークショーには、山崎さんに撮影を依頼・協力している寿建設(福島市)の森崎英五朗社長や小野組(新潟県胎内市)の小野貴史社長も参加。写真を通じて建設業の魅力を広く発信する山崎さんにエールを送った。

山崎さん


 建設業とは何の接点もなかった山崎さんが初めて道路補修の現場で撮影したのは除草作業だった。依頼した当の森崎社長ですら「正直あまり絵にならないかなと思った」という草刈りの作業にも「感銘を受けた」という。なにより「現場で働く人に魅了された。仕事に対する誇りと情熱、その熱量を写真に収めたいと思った」と語る。
 2017年秋から毎月福島県に通い、厳寒のトンネル、不眠不休での除雪、猛暑での路上工事など過酷とも思える状況にあっても集中力を切らすことなく作業に当たる姿を見つめ続けた。「この臨場感、この道路を守るんだという熱い思いは望遠レンズでは伝わらない。砂ぼこりを一緒に被りながら1m、2mと近寄れるだけ近寄ることでその1枚を大事に切り取りたい」と真摯(しんし)に向き合う。「ふと顔を上げたときの笑顔。その一瞬がたまらなく素敵であり、写真家にとってのご褒美。家族のような温かさ、現場の人間関係の豊かさも伝わる写真を撮りたい」とも。
 自身「土木のことは分からない。一般市民の目でも見ている」からこそ、より広範にフラットに伝わるのだろう。これまで各地で開かれた写真展では涙を流して写真に見入る来場者の姿もあり、「働く姿からは誇りを感じる」「これから工事看板を見かけたら感謝したい」などといった声が多く寄せられたという。4月には写真集『インフラメンテナンス~日本列島365日、道路はこうして守られている』を発刊。建設分野にとどまらず、一般マスコミなどさまざまな媒体に取り上げられ、大きな話題を集めている。
 今回の写真展でも寿建設、ネクスコ・メンテナンス東北福島事業部、小野組の現場を撮影した50点を超える写真パネルを展示。トークショーで森崎社長は「われわれの仕事は9割がクレーム。時には空き缶を投げつけられることだってある。しかし残り1割のありがとうでどれだけ救われるか。その一言で頑張っている」と語り、山崎さんの写真を通してインフラメンテナンスへの理解が深まることに期待を寄せた。
 小野社長も「現場で働く方々が誇りに思い、家族の人たちにも格好いいと思ってもらえる。森崎さんの工事現場の写真を見て不覚にも泣いてしまったが、森崎さんもうちの現場の写真を見て泣いていた。本当に撮ってもらって良かった」と謝意を示した。

トークショーでは撮影時のエピソードなどを1枚1枚丁寧に説明した。写真展は28日まで

 出版元のグッドブックス代表取締役で、山崎さんとは「十年来の仕事仲間」という良本和惠氏は「写真集を通じてインフラメンテナンスの必要性と、いま大切な時期にあることを知り、それをより多くの人に知ってもらいたいという思いが強くなった」と振り返りつつ、「山崎さんは心のかたちを投影できる写真家ではないか。こういう笑顔、誇りを撮れる人はそういない。その彼女が現場の中に入ったことに意味がある」と評した。
 インフラメンテナンス写真展は来春、フランス・パリ日本文化会館で4月末から3週間にわたって開催されることも決定した。日々の暮らしや当たり前の「日常」を守っている人たちがいる。「その重みに気づいてくれる人が1人でも多くなればうれしい」と語る山崎さんの思いは海を渡って広く世界にも発信されることになる。

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