【記者座談会】豪雨・暴風災害 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【記者座談会】豪雨・暴風災害

A 台風15号、19号を始めとする一連の豪雨・暴風災害を受け、政府が対策パッケージをまとめたが。
B 被災者の生活となりわいの再建に重点を置いた内容になった。廃棄物と土砂の撤去を生活再建の第一に掲げ、年内をめどに生活圏内から撤去する方針を打ち出した。
A ハードの対策はどうだったのか。
C 被災した都道府県管理河川と自治体管理道路の復旧工事を国が権限代行で実施することや、災害復旧事業の災害査定を効率化するルールの適用など、それまでに公表されていた取り組みが中心で、目新しいものはなかった。
A 対策パッケージを実行するための予算は。
D 2019年度予算で確保している予備費5000億円のうち、1316億円を充てる。第2弾として経済対策を今後取りまとめ、補正予算も編成する。
B 経済対策の策定は16年度以来3年ぶりだ。
D 補正予算と20年度予算を合わせたいわゆる15カ月予算で策定する。災害からの復旧・復興と安全・安心の確保が第一の柱で、治水対策を軸に組み立てる見通しだ。未来への投資も柱に据え、その実施には財政投融資を積極的に活用していく。経済対策の規模は国費で5兆円前後との観測が出ている。
A 国土強靱化施策はどうなるのか。
C 安倍晋三首相は台風19号の被害が発生した後、「国土強靱化は待ったなしの課題」と述べた。20年度までとなっている「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」の完了後にも触れ、「国家百年の大計として、予算をしっかり確保して取り組んでいく」と語っており、国土強靱化施策は強化される見通しだ。

6日に開かれた東京都の災害対策本部会議。大規模風水害に関する課題を今月中をめどに検証することなどを確認した

東京都 防災対策充実・強化の方針を確認

A ところで、東京都に目を向けると、台風19号は区部で1カ所、多摩地域で6カ所の河川に洪水を発生させた。
E 日降水量は八王子や府中、青梅など多くのアメダス観測地点で観測史上1位を記録するなど、まさに雨台風だった。増水した多摩川の影響で、甲州街道では立川市と日野市を結ぶ日野橋の橋台が沈下し、現在も通行不能になっているなど、大きな爪痕を残している。
F 台風15号では、強風による被害でJRを始め都内の電車網がまひした。東京都は6日、災害対策本部会議と大規模風水害検証会議を開き、台風や豪雨などによる大規模風水害に関する課題を今月中をめどに検証するほか、結果を20年度予算などに反映させて防災対策を充実・強化する方針を確認した。
A 東京都はこれまでに、中小河川の目標整備水準を区部で75mm、多摩地域で65mmに引き上げているが、近年災害が激甚化している中、水準のさらなる引き上げはあるのだろうか。
E 石神井川や善福寺川などで氾濫危険水位に達した河川はあったものの、東京都がこれまでに中小河川などで進めてきた治水対策が効果を発揮し、区部の外水氾濫発生は未然に防いでいる。しかし、目標値を達成するためのハード整備はまだ始まったばかりだ。
F 50mm対応の河道整備も終了が3分の2と道半ばだ。50mmを超える75mmの対応分には、さらに地下調節池などの整備も進めなければならない。整備水準として、当面は現在の目標を維持する考えだ。
A 検証の過程で必要と判断された項目は、20年度の修正に向けて作業中の地域防災計画の風水害編に反映される。気候の変動に対応するためにも着実にハード対策を進めてほしい。

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