【記者座談会】国交省の2019年度補正予算案/神戸港に世界最大級の斜張橋 | 建設通信新聞Digital

4月26日 金曜日

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【記者座談会】国交省の2019年度補正予算案/神戸港に世界最大級の斜張橋

A 国土交通省の2019年度補正予算案が国費で1兆2634億円に決まった。どのような内容だったのか。
B 「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」の第1の柱である「災害からの復旧・復興と安全・安心の確保」が、全体の9割を占めた。台風19号を踏まえた水害対策が中心だ。
C 河道掘削や堤防強化などの洪水対策に1143億円を措置する。早急な効果発現が期待できる短期的な取り組みだ。併せて、基幹的防災インフラの整備に195億円を計上する。20年度に予定していた調節池やダムなど大型事業の施設整備を前倒しで予算措置する。
B 大型の治水施設整備に補正で予算を付けるのはこれまでにない動きだ。その割合は予算全体の2%に過ぎないが、中長期的な取り組みとしてこれは大きい。台風19号でストック効果が認められたことが背景にある。経済対策ではリーディングプロジェクトと位置付けられている。
A 第2の予算と言われる財政投融資はどうかな。国交省があらためて財務省に要求したけど。
D 19年度補正予算案で6123億円、20年度予算案で1兆6371億円となった。概算要求時点で20年度予算案は8948億円。倍近い上積みとなっている。
B 政府が東京オリンピック・パラリンピック後を見据え、経済成長を支えるインフラの整備を加速するため、財投を積極的に活用する姿勢を経済対策で打ち出したことが、大幅な上積みの背景にある。
D 低金利状況を生かし、高速道路や成田国際空港の機能強化、大阪市内に建設される都市鉄道のなにわ筋線などの整備を後押しする。物流施設整備に活用範囲を広げたのも特徴と言えるね。

大阪湾岸道路西伸部の橋梁模型(新港・灘浜航路部)。5径間連続斜張橋は世界最大級の規模となる

コンセプトは「世界に誇れる景観の創出」

A 話は変わるけど、期待されていた大阪湾岸道路西伸部の新港・灘浜航路と神戸西航路に架かる長大橋の形式が決まったが。
E 神戸港の新港・灘浜航路部は5径間連続斜張橋、神戸西航路部は1主塔斜張橋に決まり、それぞれの形式で世界最大級が売りだ。
F 世界最大級の形式に決まった背景には事業の計画コンセプトにあった「世界に誇れる景観の創出」が大きいだろう。形式を検討する際の参考として実施したアンケートでも、シンボル性を求める声が多く上がっていた。
A 航路高も65.7mと国内最大級だね。
E 神戸港には大型クルーズ客船が入港する。桁下が高くないとそれらのクルーズ船は入ることができない。米国のフリーダム・オブ・ザ・シーズは航行可能な高さが65.7mだからだ。実際にはそれより高いクルーズ船もあるが、煙突を折りたたむことができるので、フリーダム・オブ・ザ・シーズが対象船として選ばれた。
F 緊急時のアクセスや修復と点検がしやすい維持管理性の高さも決め手となった。それぞれの採用されなかった比較案では、どちらも橋脚の数が多くなることで、点検や補修に適していないと判断された。
G 業界が注目していたのは、橋梁形式のほかに構造もあった。今回はどちらも鋼構造に決まった。近年厳しい状況が続いていた鋼橋梁メーカーにとって明るいニュースだった。
A あとはいつから設計に着手するのかが気になる。
G 計画路線にまたがっていくつかの断層がある。今後は地震や風などの自然による影響も検討しなければならないし、新技術の活用も検討する必要があるから、しばらくかかりそうだよ。

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